毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。質問を投げた瞬間に患者さんが黙り込んでしまい、「怒らせた?」と焦った経験はありませんか。私も新人の頃、沈黙に耐えられず話をかぶせてしまい、本音を聞き出せなかったことが何度もあります。
沈黙は拒絶ではなく、考える時間や感情を整理する時間であることが多いです。この記事では、沈黙に出会ったときに慌てず対応するための考え方と具体的なステップを、現場のエピソードとともにまとめました。
なぜ沈黙が生まれるのか
情報を整理している沈黙
薬の説明が多いと、患者さんは頭の中で優先順位を並べ替えています。私が糖尿病患者さんに食事と薬のタイミングを説明したとき、1分ほど沈黙が続きましたが、実は「朝食を抜く日はどうするか」を考えていたそうです。待ったおかげで、具体的な生活の工夫まで話せました。
感情が揺れている沈黙
診断直後や副作用の不安を抱えるとき、気持ちを言葉にするまで時間がかかります。焦って質問を重ねると、相手は殻に閉じこもってしまいます。表情や呼吸を観察し、安心して話せる空気を整えることが先決です。
何を答えればいいか分からない沈黙
質問が曖昧だったり、選択肢が多すぎたりすると起こります。「どうですか?」と漠然と聞くより、「いつ・どこで・どのくらい」を具体化すると答えやすくなります。
沈黙に出会ったときの4ステップ
1. とにかく待つ(5秒ルール)
カウントを心の中で5つ数え、相手が話し出すのを待ちます。私は手元の作業を止め、視線を合わせてうなずきます。これだけで多くの場合、相手は話し始めます。
2. 空気を和らげる一言を添える
- 「ゆっくりで大丈夫ですよ」
- 「言葉にしづらいところは、一緒に整理しましょう」
- 「思い出す時間を取りますね」
短い声かけで沈黙のプレッシャーを減らすと、相手が安心して考えられます。
3. 質問の角度を少し変える
- 「今の説明で気になる場面はどこですか?」
- 「普段の生活で、一番困りそうなときはいつでしょう?」
- 「ご家族に伝えるとしたら、どこが心配ですか?」
同じ内容でも、生活の場面や相手の視点に寄せると答えやすくなります。質問を変える前に、必ず「今のままで大丈夫ですか?」と確認を挟むと押しつけ感が減ります。
4. 要約して合意を取る
沈黙のあとに出た言葉は、とても大切な本音であることが多いです。「つまり、朝食を抜く日は飲まない方が安心なんですね。ではその場合の手順を書きます」と要約し、紙やメモに残します。私はこのステップを怠らなくなってから、再来局時のトラブルが減りました。
具体例:私が失敗から学んだ瞬間
ケース1:検査前の不安に気づけなかった
血液検査前に沈黙した患者さんに、私は立て続けに副作用を説明してしまいました。後で「怖くて何も聞けなかった」と言われ、ショックでした。それ以来、沈黙を感じたら「一番気になることは何ですか?」と開いた質問を置くようにしています。
ケース2:家族同席での沈黙
家族が横にいると、本音を言いづらいことがあります。沈黙が続いたら「お一人で確認したいことはありますか?」と席を外す提案をします。実際にそれで「夜勤のときに薬を忘れやすい」と教えてもらえたことがありました。
ケース3:怒りの沈黙
クレーム対応で沈黙が走るときは、感情がピークに達している可能性が高いです。私はまず「驚かせてしまい、申し訳ありません」と謝り、相手の表情が緩むまで待ちます。その後で事実確認の閉じた質問に移ると、話が進みやすくなります。
沈黙を活かすためのチェックリスト
- 質問の意図を先に伝えているか
- 待つ時間を自分でカウントしているか
- 生活場面に置き換えた質問を準備しているか
- 要約とメモをセットで行っているか
調剤台に小さな付箋で貼っておくと、忙しいときでも思い出せます。
まとめ|沈黙は信頼の入口
沈黙は「話を聞く準備ができている」サインでもあります。慌てず待ち、優しい一言を添え、質問の角度を調整する。このシンプルな流れで、患者さんの本音に触れられることが増えました。
今日のカウンターでも、沈黙が訪れたら「5秒待つ」を合図にしてみてください。面倒に感じるかもしれませんが、その短い時間が信頼を深め、適切な服薬行動につながります。

