毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。
薬局では思わぬトラブルが日常的に起こります。怒りをぶつけられたときこそ、言葉と態度の組み合わせが勝負です。
今回は現場で何度も試してきた「怒りを鎮める3ステップ」を深掘りします。
ステップ1:まず温度を下げる「停止と受容」
怒りの相手に正論を返しても火に油です。最初にやるべきは「言い分を遮らず聴き、温度を下げる」こと。私は処方ミスを疑われたとき、「お話を最後まで聞かせてください。整理して一緒に確認します」と静かに宣言します。これだけで怒鳴り声が一段落ち、会話が成立することが多いです。
非言語で安全を示す
- 目線を合わせすぎず、相手の拳や肩の緊張を観察
- 両手を開いた姿勢で立つ
- うなずきと低い声量で「承知しました」と返す
非言語が落ち着いていると、相手の交感神経も徐々に鎮まります。
NG対応
- 即座に「それはできません」と否定する
- 背中を向けて作業を続ける
- 警備員を呼ぶなど強い圧を早期にかける
これらは怒りのエスカレーターを上げるだけです。
ステップ2:怒りの芯を言語化する「整理と共感」
怒りの表面には「怖さ」「不安」「損した感覚」が隠れています。ここを言語化し、共感で包むと温度が下がります。
質問の順番
- 事実確認:「いつから症状がありましたか?」
- 期待の確認:「どうなれば安心できますか?」
- 損失の確認:「何が一番困っていますか?」
私は「お薬が間違っているかも」と怒鳴られたとき、
- 「どの薬が違うと感じられましたか?」
- 「この後の予定で困ることはありますか?」
と小さく分けて質問し、「ご不安ですよね。まず一緒にリストを照らし合わせましょう」と共感で受け止めました。怒鳴り声が落ち着いたら初めて事実の説明に入ります。
共感フレーズ例
- 「不安になりますよね。私も家族なら同じ気持ちになります」
- 「お時間を取らせてしまい申し訳ありません」
- 「大切なお身体のことですから、慎重に確認します」
ステップ3:具体策を提示する「選択肢と時間軸」
怒りは「出口のない状況」で強くなります。出口を提示することが最重要。私は必ず「今できること」「確認に要する時間」「次に連絡するタイミング」をセットで伝えます。
具体的な伝え方
- 「医師に確認します。10分以内に状況をお伝えします」
- 「代替薬の在庫を確認し、今日中にお渡しできるか5分で調べます」
- 「一旦お席でお待ちいただき、私が戻ってきます」
代替案を持つ
在庫切れや処方変更が必要な場合、
- 「別の成分で同じ効果が期待できる薬があります。医師に相談してもよろしいですか?」
- 「宅配でお届けすることもできます。ご希望を教えてください」
と選択肢を示すと、相手は「選べる」安心感を得ます。
よくあるケース別のポイント
処方待ち時間への怒り
- 受付時に目安時間と混雑理由を先に伝える
- 10分以上延びる場合は必ず途中報告
- 「お茶をご用意します」「席を変えます」など小さなケアを挟む
金額差への怒り
- 点数変更の理由を紙に書きながら説明
- 「領収書の内訳を一緒に確認しましょう」と並列で見る
- 次回からの費用見通しを提示
処方疑義への怒り
- 医師への連絡をその場で行い、電話内容を要約して伝える
- 「この分量で医師の意図は○○とのことです」と医師の言葉をそのまま返す
- 必要なら別日フォローを予約
感情の波が再燃したときのリカバリー
一度落ち着いても、説明の途中で再燃することがあります。私は「いったんここまでの確認を整理します」と小休止を挟み、紙に箇条書きで現状を書き出します。視覚的に情報を並べると、怒りより理解が優先されやすいです。
チームでの動き方
役割分担
- 受付:入口で謝意と時間目安を提示
- 薬剤師:事実確認と代替案提示
- 担当変更:長引く場合は交代し、新鮮な空気で話を進める
申し送り例
薬歴に「待ち時間で怒り」「代替薬相談可」「連絡先確認済み」と具体メモを残します。次回来局時に同じストレスを与えないための最低限の情報共有です。
まとめ:怒りを鎮める3ステップ
- 停止と受容で温度を下げる
- 怒りの芯を言語化し共感で包む
- 具体策と時間軸を示して出口を作る
この順番を守ると、現場のトラブルは大抵収まります。怒りの奥には不安があります。そこに寄り添う言葉を準備し、チーム全体で同じステップを共有しましょう。

