「よくある質問」に頼らない対話の引き出し方

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毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。カウンターで「いつもの質問」で流してしまい、後から大事な情報を聞き逃したと気づくこと、ありませんか。私もチェックリストを読み上げるだけで満足し、患者さんの表情が曇っていく瞬間を何度も経験しました。

この記事では、テンプレ化した「よくある質問」に頼らず、相手の本音を自然に引き出すための対話設計をまとめます。面倒くさがりな私でも続けられた小さな工夫を詰め込んだので、今日の現場ですぐ試せます。

目次

なぜ「よくある質問」が危険なのか

聞き手の安心と相手の安心がズレる

決まった質問を順番に消化すると、こちらは「漏れなく確認できた」と安心します。しかし患者さんは「自分の困り事を聞いてもらえなかった」と感じ、信頼が下がることがあります。安全確認と安心感の両立には、質問のカスタマイズが欠かせません。

本音が出にくい理由

  • 質問が抽象的で具体的な生活が思い浮かばない
  • 一問一答で会話が途切れ、深掘りする余白がない
  • 「正解」を答えなければと思わせ、本音を隠させてしまう

私自身、マニュアルに沿った質問を投げるだけでは「実は薬を飲み忘れた」「家族が不安がっている」といった重要な情報が出てきませんでした。

本音を引き出すための3ステップ

ステップ1:入口で「テーマ」を共有する

「今日は副作用が気になる点を中心に伺いますね」と最初にテーマを宣言します。テーマを伝えると、患者さんも関連するエピソードを思い出しやすくなります。私は「体調の変化」と「飲み方の工夫」の二つをセットで話すことが多いです。

ステップ2:生活場面を具体化する開かれた質問

  • 「薬を飲む前後で、1日のどこが一番バタバタしますか?」
  • 「家で薬を保管している場所はどこですか?」
  • 「飲み忘れたとき、どうやって気づきますか?」

生活の風景を思い描いてもらうと、患者さん自身が課題に気づきます。この段階では、選択肢は出さず自由に語ってもらうのがポイントです。

ステップ3:相手の言葉で要約してもらう

「今日の話を家族に伝えるとしたら、どこを強調しますか?」と聞くと、理解している部分と曖昧な部分が見えます。曖昧なところは閉じた質問で補足し、「では、その点だけチェック表に書き込みましょう」と一緒に整理します。

場面別・テンプレを卒業する質問例

服薬状況の把握

  • 「朝の支度中、薬を飲むタイミングを忘れないために何か工夫していますか?」
  • 「飲み忘れたとき、次はどう対応していますか?」
  • 「週の中で一番飲み忘れやすい日はいつですか?」

副作用の確認

  • 「どのタイミングで体の違和感に気づきましたか?」
  • 「そのとき何をしていて、誰が近くにいましたか?」
  • 「不安を感じた瞬間を思い出すと、どんな感情が強かったですか?」

生活の支障を探る

  • 「薬を飲むことで助かった場面はどこですか?」
  • 「逆に、薬のせいで困ったと感じた場面は?」
  • 「家族や同僚からかけてもらって嬉しかった言葉はありますか?」

聞き方をアップデートする小さな工夫

「理由」を先に伝える

「副作用が心配なので、感じた違和感を詳しく聞かせてください」と前置きすると、質問の意図が伝わり協力的になってもらえます。理由を共有すると、答えがブレにくくなるのを何度も実感しました。

沈黙を味方にする

質問のあと、あえて2秒ほど黙ります。最初は気まずかったのですが、黙ることで患者さんが考える時間を確保できます。私は視線を合わせて軽くうなずき、「ゆっくりで大丈夫ですよ」と一言添えるようにしています。

まとめて確認する

質問の区切りごとに「今のところで合ってますか?」と確認を入れると、話が脱線しても戻しやすいです。以前は一気に質問してしまい、「何を答えればいいか分からない」と言われた苦い経験があります。

忙しい時間帯のショートカット例

  1. 共感:「お待たせしました。朝はバタバタしますよね」
  2. 生活場面:「薬はどこに置いていますか?」
  3. 具体化:「飲み忘れたとき、どう気づきますか?」
  4. 要約:「では、寝る前に置き場所を変える方法でいきましょう。大丈夫ですか?」

この4ステップだけでも、テンプレ質問を並べるより情報が濃くなります。私はピーク時にこのミニ版を使い、落ち着いた時間に詳細を追加で聞くようにしています。

使わないほうがいいNG質問

  • 「大丈夫ですか?」だけで終わる質問(曖昧で答えづらい)
  • 「忘れませんよね?」と圧をかける質問(本音が出ない)
  • 連続する閉じた質問(尋問感が出て信頼を損なう)

これらは相手を守るつもりが逆にストレスを与えがちです。代わりに「一番心配なことは何ですか?」と開くことで、必要な情報が自然に出てきます。

まとめ|質問の目的を毎回リセットする

「漏れなく確認すること」と「本音を引き出すこと」は両立できます。チェックリストに加えて、生活に寄り添う開かれた質問を1つ入れるだけで、患者さんの安心感が大きく変わります。私自身、質問の目的を毎回リセットする習慣をつけてから、「話しやすかった」と言われることが増えました。

テンプレを捨てるのではなく、土台にしながら相手に合わせてカスタマイズする。今日のカウンターで、いつもの質問を一つ言い換えてみてください。小さな変化が、信頼の大きな一歩になります。

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この記事を書いた人

現役薬剤師として、人と向き合う仕事を続けてきました。
患者さんとの何気ない会話の中に、信頼や安心が生まれる瞬間がある――そんな「伝え方」の力に魅せられて、このブログをはじめました。

いまは医療の現場を離れ、**「伝える力」「聴く力」**をテーマに、日常や職場、家族の中で使えるコミュニケーションのヒントを発信しています。

心理学や会話術、言葉選びの工夫など、明日から使える内容を中心に。
読んだ人の人間関係が少しでもやわらかくなるような記事を目指しています。

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