毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。薬局の投薬台で朝イチから晩まで話していると、誰が話す番か迷って空気が固まる瞬間に何度も遭遇します。マジで「え、今は誰が仕切るの?」と身構えるあの空気をほぐせるかが、信頼づくりの分かれ目です。
会話のフロアってなに?
「会話のフロア」は、今この瞬間に誰が発言権を握っているかを共有する目に見えない土台です。病院帰りで疲れ切った患者さんに説明する場面を想像してください。こちらが一気に話してしまうと、患者さんが質問したくても割り込めなくなる。逆に沈黙を長く取りすぎると「忘れられた?」と不安にさせてしまう。会話のフロアは、そういった取っ散らかったやり取りを整えるルールの集合体なんです。
フロアが崩れたときに起こる混乱
ある日、花粉症で鼻を押さえながら来局した高校生がいました。ご両親と一緒で、3人が同時に話し出した瞬間に、私は誰の目を見ればいいか迷い、説明がふわっとしてしまった。結果、「結局どの薬を先に飲めばいいの?」と質問が飛び交い、待合の患者さんもソワソワ。会話のフロアが崩れると、聞き漏れ・誤解・時間ロスが一気に増えるわけです。
フロアが回り出すと得られる安心感
一方、うまく回ると相手の理解度が格段に上がります。抗がん剤の副作用について説明したとき、私はあえてアイコンタクトと相槌のテンポで「どうぞ質問してください」のサインを送りました。すると患者さんは安心した表情で「爪が黒くなったら病院へ行くべきですか?」と細かい疑問を出してくれた。フロアが滑らかだと、心配事を早めに吐き出してもらえるんです。
読者の悩みを整理する
「患者さんやお客様が質問しづらい空気を作ってしまう」「沈黙が怖くてついしゃべり続けてしまう」「話すタイミングがわからず割り込んで嫌がられる」――そんな相談を薬局では毎日のように受けます。営業でも接客でも、会話のフロアが見えないと、自分の伝えたいことばかり優先してしまいがち。それが信頼を落としていると気づけないんですよね。
よくあるシチュエーション
- カウンター越しに説明していると、相手がペンをいじり始める。こちらは「聞いてる?」と不安、相手は「割り込めない」と焦り。
- 説明の途中で質問されたら負けだと勘違いして、全部話し切ろうとする。結果「話が長い」とクレームに。
- チームミーティングで誰も話し始めない。沈黙に耐えられずにリーダーが一方的に指示を出して終わる。
どれもフロアのルールが共有されていない証拠です。悩んでいる人ほど「話の内容」に意識がいき、場の回り方を整える視点が欠けています。
原因はフロアを示すサインの欠如
会話のフロアは、言葉だけでなく視線・間・姿勢といった非言語のサインで回っています。ここが足りないと、相手は「いつ話せばいいの?」と迷い、結果として会話がぎこちなくなる。
非言語サインのズレ
薬局では、処方箋を見ながら説明するときに視線が手元に落ちっぱなしになることがあります。すると患者さんは「あ、今は聞いてるだけか」と受け身モードに入ってしまう。逆にこちらが顔を上げたタイミングでうなずきや身振りを入れると「今なら話していい」という合図になる。このズレを調整できるかでフロアの回り方が変わります。
言語サインの不足
言葉の面でも「この後に質問をまとめて伺いますね」「途中でも遠慮なく止めてください」など、フロアを譲る宣言を入れておくと、相手が割り込みやすくなる。私は投薬前に必ず「一度説明を通しでお話ししますが、気になるところはすぐ聞いてください」と口にします。このワンクッションで、質問数が倍増したデータも自分のメモに残しています。
解決手順:フロア設計の5ステップ
1. 目的を共有する
会話の冒頭で「今日は服薬のタイミングを一緒に整理しましょう」など、ゴールを共通認識化します。ゴールを聞いた相手は、自分の発言タイミングをイメージしやすくなる。患者さんとの会話では、これだけで沈黙の時間が短くなるんですよ。
2. 役割を宣言する
誰が説明役で、誰が質問役なのか。私は「私から手順を説明しますので、途中でわかりにくいところがあったらすぐ教えてください」と言います。この一言で、相手は自分が質問してもよいと理解し、会話のフロアが二人で共有される。
3. ターン交代の合図を決める
視線を合わせてうなずく、説明が終わったら手元の資料を相手のほうへ返すなど、ターンが移るタイミングを分かりやすくします。現場では「ここまでが私の説明です。次にご質問を伺いますね」というフレーズをルーティンにしました。
4. ミニサマリーで区切る
長い説明が続くとフロアが固まります。1分話したら「つまり、朝食後に1錠、夜は不要です」と一度まとめる。これを聞いた相手は理解を確認しつつ、質問を差し込みやすい。忙しい朝でも、このミニサマリーを入れるだけで「わかりやすい」と褒められます。
5. 次のアクションを明確にする
会話の締めに「次回の通院時に副作用の変化を教えてください」と伝えると、相手はフロアの終わり方を理解します。終わりが曖昧だと、立ち去り際に呼び止められることが多く、お互い気まずい。出口を示すこともフロアの重要なルールです。
実践例:薬局現場での導入レポート
ケース1:初来局の患者さん
初めて薬局を利用する患者さんは、こちらの説明スタイルを知らないので、フロアが固まりがちです。私は「最初にまとめてご説明しますが、途中で止めてくださいね」と軽く笑いながら伝えます。その直後、患者さんは処方箋に指を置いて「ここは朝だけでいい?」と確認してきた。早めに質問が出たおかげで、勘違いを防げたケースです。
ケース2:家族が同席する場面
高齢者の服薬指導で家族が同席する場合、誰がフロアを握るかが複雑になります。私はまず患者さん本人に「聞き取りながら進めますね」と確認したうえで、ご家族には「フォローありがとうございます。途中で補足があればお願いします」と伝える。すると、会話の中心は患者さんに置きつつ、必要なときだけ家族がサポートする形に落ち着きました。
ケース3:クレーム対応
忙しい夕方に「説明が長すぎる」と怒鳴り込まれた経験もあります。そのときはフロアを急いで整えるために、「ご不快にさせてしまい申し訳ありません。まず状況をうかがってよろしいですか?」と主導権を相手に渡しました。相手が言いたいことを吐き出した後で、「では対処法を3つご提案します」と再びフロアを受け取り、落ち着いて解決できました。
注意点と落とし穴
合図が多すぎると逆効果
フロアを整えようとして、頷きや相槌を多用しすぎると「早く終わらせたいのかな?」と勘違いされることがあります。実際、私が新人のころにやらかしました。患者さんに「そんなに急かさなくても…」と苦笑されたので、合図は相手のペースに合わせて調整するようになりました。
権威を振りかざさない
医療職にありがちなのが「専門家だから黙って聞いて」という態度です。これをやるとフロアが一方通行になり、相手は本音を隠します。私は「専門用語がわかりにくかったら遠慮なく」と常に伝えることで、専門家としての信頼を保ちながら対等なフロアを作っています。
デジタルコミュニケーションの盲点
オンライン面談や電話では非言語サインが減るため、フロアが乱れやすい。Zoomの服薬指導では「3分ごとに質問タイムを作ります」と最初に宣言しました。これだけで、相手が話すタイミングをつかみやすくなります。
まとめ:フロアを意識すれば会話はもっと楽になる
会話のフロアは、目に見えないけれど確実に存在するルールです。誰がいつ話すかを暗黙の了解に任せず、目的・役割・合図・区切り・出口を丁寧に設計することで、会話は滑らかに回り始めます。薬局の現場で積み重ねた経験から言えるのは、「話す内容」よりも「話す順番と合図」のほうが信頼構築に直結するということ。今日の対応から、ぜひフロア設計を試してみてください。わからんと感じたら、まずは「途中で質問してください」と一言添えるところから始めましょう。マジで世界が変わります。

