毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。薬局でも本部でも、1on1は「やっているつもり」が一番怖い。形だけの10分で終わらせると、むしろ不信感が増します。逆に、準備とフォローを丁寧に回せば、週1の短い対話でも信頼がじわっと積み上がることを現場で実感してきました。
1on1を「相談の場」にするための事前準備
1on1を「評価の場」と思われた瞬間、相手は本音を隠します。私は必ず24時間前に、テーマ候補と時間配分案を送ります。「今週は患者クレーム対応の振り返り10分、薬歴入力の効率化5分、あなたの悩み5分」のように具体的に書くと、相手も話したいことをメモしてきてくれる。さらに、場所をカウンター横ではなく半個室やバックヤードに変えるだけで、声のトーンが落ち着き、雑談が増えます。
事前準備チェックリスト
- アジェンダ案を前日に共有(3項目以内)
- 相手の最近の成功・苦戦のメモを自分用に1枚作る
- 「今日は評価はしない」と明言するメッセージを添える
- 他のスタッフからのポジティブな声を1つ集めておく
冒頭3分で安心感を作る「開き方」
1on1が始まった瞬間の空気で、その日の深さが決まります。私は必ず「今日は相談オンリー。評価はゼロ」と口に出し、前回のアクションを一緒に確認。「前回、在宅準備のチェックリストを作ったけど、使い心地どうだった?」と聞くと、相手は「ちゃんと覚えてくれているんだ」と安心する。ここで私の失敗談も添えます。「昨日、患者さんの前で薬歴を開いたまま別件の確認を始めちゃって焦った」と話すと、相手も肩の力が抜ける。開き方で心理的安全性をセットします。
使えるオープニングフレーズ
- 「今日は相談に全振り。評価は置いておこう」
- 「前回の〇〇、どうだった?一緒に振り返らせて」
- 「私も昨日しくじったんだよ。これを乗り越えたい」
聴く側の姿勢:沈黙を怖がらず、感情を映す
沈黙が怖いと、つい質問を重ねてしまい、相手の思考を遮ります。私は沈黙が5秒続いたら、水を一口飲みながら待つようにしています。その間、相手は頭の中を整理して言葉を探している。口を開いたら、まず感情に名前をつけて返す。「それ、悔しいよね」「モヤモヤしてたんだね」と映すと、相手の表情が緩む。薬局で新人が「患者さんに質問を遮られて落ち込んだ」と話したときも、「怖かったよね。何が一番つらかった?」と感情から掘り下げたら、本音の「自分の説明が長すぎたかも」が出てきました。
聴き方のミニルール
- 5秒の沈黙は「考える時間」と捉え、埋めない
- 感情の言葉(嬉しい・悔しい・不安)を返してから事実を聞く
- 相づちは胸の高さで大きく、視線は目元に合わせる
- ノートは最小限。手元を見すぎると尋問っぽくなる
悩みの原因を「構造」で整理する
1on1が雑談で終わると、現場改善につながりません。私はA3の紙に「出来事→影響→望む状態→障壁→次の一手」という5箱を手書きし、目の前で埋めながら話します。例えば「監査が後ろ倒しになる」なら、影響は「患者待ち20分」「ミス発生リスク増」、望む状態は「午前中に80%完了」。障壁を聞くと「入力端末が1台」「新人への指示が後手」という具体が出る。次の一手は「端末を在宅から一時拝借」「新人に事前にロール配布」など小さい行動に落とす。構造化すると、責任追及ではなく共同設計になる。
5箱シートの書き方
- 左上に「出来事」を短文で書く。
- 右上に「影響」を時間・感情・コストで3点書く。
- 左下に「望む状態」を数値と感情で描く。
- 中央に「障壁」を箇条書きする。
- 右下に「次の一手」を2〜3個決め、実行日をその場で決める。
伴走を約束する「仮予約」テクニック
提案だけして終わると、1on1は説教に聞こえます。私は必ず「一緒にやる日時」を決めます。例えば「在宅バッグの中身を15分で整理するなら、木曜の閉局後に一緒にやろうか?」とカレンダーを開き、その場で招待を送る。仮予約が入ると、相手は「一人じゃない」と感じて動きやすい。実際、在庫発注に苦戦していたスタッフも、仮予約で「日曜朝に棚前で10分チェック」を設定したら習慣化しました。
仮予約を通すコツ
- 具体的な日時と場所を提案し、すぐにカレンダー招待
- 15分以内の小さな行動に絞る
- 同行する理由を伝える(「一緒に失敗を拾うから安心して」)
フィードバックは「3つの事実+1つの質問」で
評価を避けつつ成長を促すため、フィードバックは事実ベースで3点だけ。「患者さんが頷いていた」「説明時間は5分以内」「チェックリストが活きていた」など観察を伝え、最後に質問を1つ。「次に変えるとしたらどこ?」と聞くと、相手自身が改善点を言語化する。薬局で新人が服薬指導をした後、この型で伝えたら、「次は間をもう少し空けます」と自分で答えを出し、翌週には患者の表情が変わりました。
使いやすい質問例
- 「どの瞬間に手応えを感じた?」
- 「もう一度やるなら何を足す?」
- 「どんなサポートがあると次の一歩を踏み出せそう?」
記録と共有は「物語+数値」のセットで
1on1の内容は必ずSlackに簡潔に残します。「在宅準備の順番を決めた→患者待ち時間が10分短縮→本人が自信を持った」など、物語と数値をペアにする。本人をタグ付けし、感謝を添えると承認欲求が満たされ、次の1on1も楽しみにしてくれる。記録を週次で3本ピックアップして朝礼で共有すると、他のスタッフも「自分も相談してみよう」と近寄ってくる。
記録テンプレ
- 話したテーマ:〇〇
- 決めた行動:〇〇(日時つき)
- 変化:時間・感情・患者の反応
- 感謝:同行・協力してくれた人を明記
ケース:クレーム対応で落ち込んだ新人との1on1
新人が患者さんに声を荒らげられ、肩を落としていた日。私は翌朝に10分の1on1を組み、事前に「評価なし」を宣言。開口一番、「怖かったよね」と感情を映し、5箱シートで整理。影響は「夜に眠れなかった」、望む状態は「次は落ち着いて謝る」。障壁に「謝罪の言葉が浮かばない」が出たので、仮予約で「今日の閉局前に謝罪文練習」を設定。フィードバックは「声のトーンが落ち着いてた」「目線が相手に合ってた」「メモを残していた」の3点+「次に足したい一言は?」で終了。翌週、同じ患者さんが来局し、丁寧に対応できたと笑顔で報告してくれました。1on1は傷を癒やし、挑戦を再開させる栄養剤だと感じます。
まとめ:1on1は“同じ方向を見直す”ための習慣
信頼が深まる1on1は、特別なスキルよりも準備と伴走が肝です。テーマ共有→安心の開き方→沈黙を待つ聴き方→構造化→仮予約→物語共有。これを淡々と回すだけで、10分でも関係は確実に前進する。忙しい薬局でも、週1回の1on1を続けると、スタッフの目線が揃い、患者さんへの声かけも自然に温かくなるはずです。私自身も毎回失敗を持ち寄りながら、信頼を積み重ねています。一緒に“話し続けられる職場”を育てていきましょう。

