医従事者が無意識に使ってしまうNGワード集

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毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。
忙しい現場では、つい口をついて出た一言が患者さんの信頼を削ってしまうことがあります。
今日は医療従事者が無意識に使いがちなNGワードと、実践的な言い換えをまとめました。

目次

なぜNGワードが出てしまうのか

時間圧とルーティン化

調剤や処置がルーティンになるほど、説明も省略しがちです。私はかつて「いつもの薬です」と連呼して、患者さんから「本当に同じなの?」と不安を募らせてしまったことがあります。忙しいときほど言葉が粗くなるのは避けたいポイントです。

専門用語の思考癖

医療者同士で使う言葉がそのまま患者さんに漏れます。「コンプライアンス」「アドヒアランス」も、意味を伝えなければただのカタカナ。相手が理解できるかを常に確認する習慣が必要です。

NGワードと代替表現

1. 「大丈夫です」だけで終わらせる

  • NG: 「このくらいの副作用なら大丈夫です」
  • 代替: 「症状は一過性のことが多いですが、続く場合はすぐ連絡ください。緩和の方法も一緒に考えます」
    「大丈夫」は便利ですが、根拠や次の行動をセットにしないと突き放された印象を与えます。

2. 「いつもの薬です」

  • NG: 「いつもの薬だから説明省きますね」
  • 代替: 「今回も同じ成分ですが、季節で体調が変わるかもしれません。変化があれば教えてください」
    繰り返しでも「今の状況」を添えるだけで安心感が違います。

3. 「ちゃんと飲んでください」

  • NG: 「ちゃんと飲まないと効きませんよ」
  • 代替: 「続けるコツはありますか?一緒にスケジュールを組みましょう」
    命令形より、一緒に方法を探る姿勢が信頼を作ります。

4. 「わかりますか?」の連発

  • NG: 説明の区切りごとに「わかりますか?」
  • 代替: 「ここまでで気になる点はありますか?」
    質問の形を変えるだけで、問い詰め感が減ります。

5. 「この薬は弱い/強い」

  • NG: 「弱い薬だから安心です」
  • 代替: 「効果を穏やかに出す薬です。体への負担が少ない設計です」
    強弱より、作用の特徴を具体的に伝える方が誤解を招きません。

6. 「まあ様子見で」

  • NG: 「とりあえず様子見でいきましょう」
  • 代替: 「次の一週間で●●の変化があれば教えてください。連絡をいただいたら○○の対応をします」
    期限と次の動きをセットにすると、放置された印象を防げます。

7. 「気のせいです」

  • NG: 「それは気のせいでしょう」
  • 代替: 「気になる症状ですね。似たケースでは○○が原因だったことがあります。念のため確認しましょう」
    感覚を否定せず、検証姿勢を示します。

8. 「そんなに心配しなくていい」

  • NG: 「心配しすぎですよ」
  • 代替: 「心配になりますよね。安心材料を揃えるので、一緒に見ていきましょう」
    心配を評価せず、安心材料を提示するのがカギです。

9. 「忙しいので」

  • NG: 「今忙しいので後で」
  • 代替: 「あと5分で戻ります。それまでに気になることをメモしておいてもらえますか?」
    待ち時間の目安と次のアクションを伝えるだけで、放置感が消えます。

10. 「ルールなので」

  • NG: 「ルールなので無理です」
  • 代替: 「安全のためにこの手順が必要です。別の方法でサポートできるか考えます」
    理由と代替案を示せば、硬直的な印象を避けられます。

シチュエーション別NGワード

服薬指導中

「一日三回きっちり飲んでください」とだけ言うと、忙しい人ほど反発します。私は「食事のタイミングはどのくらい決まっていますか?」と先に生活を聞き、現実に合わせた提案をします。

副作用相談

「その程度なら様子見で」と言ってしまうと、患者さんは「心配が軽視された」と感じます。代わりに「症状が強まったらこの番号にお電話ください。今できる対処もお伝えします」と出口を示します。

家族対応

家族に向かって「ご本人が頑張らないと」と言うと、責任を押し付ける形になります。「ご家族のサポートがあってこそ続けられます。負担にならない形を一緒に考えましょう」と協力の姿勢を示します。

NGワードを減らすための習慣

1. 申し送りに「使いたいフレーズ」を記載

私は薬歴に「次回も“確認しますね”で入る」「様子見と言わない」など自分へのメモを書きます。これだけで口癖が減りました。

2. 振り返りミーティングでシェア

週1の短い振り返りで、スタッフが使ってしまったNGワードと代替案を共有。場が温まるので、次回から声を掛け合いやすくなります。

3. 患者目線のチェックリスト

「否定していないか」「期限を伝えたか」「次の連絡先を伝えたか」を一覧にして、忙しい日ほど確認しています。

実例:言い換えで反応が変わった瞬間

抗凝固薬を服用する患者さんに「出血しやすいから気をつけて」とだけ伝えたときは怖い顔をされました。そこで言い換えて「もし出血があったら止まるまでの時間を教えてください。必要なら医師と相談し、飲み方を調整します」と具体策を示したところ、表情が和らぎました。言葉が行動のイメージを作ることを痛感しました。

まとめ:言葉の精度が信頼を作る

NGワードは悪意ではなく習慣から生まれます。だからこそ気づいた瞬間に書き換える仕組みが大事です。「否定せず、根拠と選択肢を添える」この原則を持てば、忙しい現場でも患者さんとの距離を縮められます。今日の会話から一つ、代替フレーズを試してみてください。

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この記事を書いた人

現役薬剤師として、人と向き合う仕事を続けてきました。
患者さんとの何気ない会話の中に、信頼や安心が生まれる瞬間がある――そんな「伝え方」の力に魅せられて、このブログをはじめました。

いまは医療の現場を離れ、**「伝える力」「聴く力」**をテーマに、日常や職場、家族の中で使えるコミュニケーションのヒントを発信しています。

心理学や会話術、言葉選びの工夫など、明日から使える内容を中心に。
読んだ人の人間関係が少しでもやわらかくなるような記事を目指しています。

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