毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。問診や服薬指導の場面で「何から聞けばいいの?」と迷い、聞きたい情報が得られないまま時間が過ぎた経験、ありませんか。私も新人の頃は質問の種類を意識せずに話しかけ、患者さんを困らせてしまったことがあります。
医療面接では、開かれた質問(オープン・クエスチョン)と閉じた質問(クローズド・クエスチョン)の使い分けが鍵になります。この記事では、その違いと現場での使い方を、調剤カウンターでの体験を交えながら整理しました。
この記事で得られること
- 開かれた質問と閉じた質問の役割と特徴
- 状況別の効果的な切り替え方
- 聞き漏れを防ぐ質問テンプレート
- 時間がないときでも丁寧に聞く工夫
質問の基本を押さえる
開かれた質問とは
「最近の体調はいかがですか?」のように、自由に答えてもらう形です。患者さんの生活背景や価値観が見えやすく、信頼関係づくりの土台になります。ただし、答えが長くなりやすいので、時間配分や要約が不可欠です。
閉じた質問とは
「痛みは何点ですか?」「朝は薬を飲みましたか?」など、選択肢やYes/Noで答える質問。情報を絞り込むのに便利で、服薬状況の確認や緊急性の判断に役立ちます。ただし、相手に尋問感を与えないよう、表情や声色で柔らかさを足しましょう。
使い分けのイメージ
開かれた質問で大枠をつかみ、閉じた質問で重要ポイントを確定する流れが基本です。私の場合、初めての患者さんには必ず「普段の生活リズムや困っていることを教えてください」と広く聞き、最後に「では、この薬は朝食後で問題なさそうですか?」と絞り込みます。
よくある失敗と改善のコツ
聞く順番が逆で混乱する
開かれた質問の前に閉じた質問を連発すると、患者さんは「答えだけ出せばいいのかな」と身構えてしまいます。最初は共感を交えた開かれた質問でリラックスしてもらい、その後に確認型の質問を挟むとスムーズです。
同じ質問を何度もしてしまう
メモを取りながら整理するのが基本ですが、忙しいとつい忘れます。私は「聞く→要約する→確認する」を一セットにして、区切りごとに患者さんへ短くフィードバックします。「つまり、夜に咳が強いんですね。では夜の薬で重点的に対応しましょう」と声に出すだけで、重複質問が減りました。
時間がないときの乱暴な閉じた質問
ピーク時間帯は「飲み忘れ、あります?」「副作用、大丈夫?」と連射してしまいがち。でも、それでは本音は出ません。開局直後に60代の男性が来局したとき、私はあえて「朝は慌ただしかったですよね。何か気になることはありましたか?」と開かれた質問を一つ置きました。すると「実は昨夜の薬を飲み忘れた」と自発的に話してくれて、服薬指導の質が一気に上がりました。
ステップ別・質問の組み立て例
1. 入口で安心感を作る
- 「寒い中ありがとうございます。今日はどんなことが気になっていますか?」
- 「最近、生活リズムに変化はありましたか?」
ここで開かれた質問を2〜3個投げ、言葉のテンポを患者さんに合わせます。反応が薄い場合は、うなずきや笑顔でリズムを作ると口が開きやすくなります。
2. 主訴を深掘りする
- 「どんなときに症状が強くなりますか?」
- 「仕事中や家で、特に困る場面はありますか?」
- 「以前はどう対処していましたか?」
具体的な生活場面を聞くと、薬の提案や服薬タイミングの調整がしやすくなります。ここでも開かれた質問を主体にし、相手の言葉で語ってもらうのがポイントです。
3. 医学的確認を締める
- 「熱は最高で何度くらいでしたか?」
- 「薬を飲み忘れた回数は1週間で何回くらいですか?」
- 「副作用で困った症状はありましたか?」
ここでは閉じた質問に切り替え、必要情報を漏らさず回収します。選択肢を提示すると答えやすくなり、「0回、1〜2回、毎日忘れることがある」など段階を示すと数字を引き出しやすいです。
4. まとめと再確認
- 「今日お伺いした内容を踏まえて、夜の薬を少し前倒しして飲む方法でいきましょう。大丈夫そうですか?」
- 「ご家族に説明するとき、どのポイントを伝える予定ですか?」
最後に開かれた質問を入れ、患者さん自身の言葉で要約してもらいます。これで理解度のズレを修正できます。
忙しい現場での時短テク
3分で使える質問テンプレ
- 共感+開いた質問:「待ち時間長くてすみません。最近の症状で一番困ることは何ですか?」
- 深掘り:「それはいつ、どこで起きやすいですか?」
- 確認:「今日は熱は出ていませんか?」
- 要約確認:「では、夜に咳が強いので、就寝前の吸入を丁寧にやってみる形で進めます。大丈夫ですか?」
この流れをメモにして、私は調剤台の横に貼っています。焦っているときほどテンプレに戻ると、質が安定します。
非言語で質問を助ける
目線を患者さんの高さに合わせ、うなずきを大きめにするだけでも話しやすさが上がります。私はカウンター越しに少し体を前に倒し、手元は止めて相手を見る時間を意識的に作っています。忙しさを隠さず「今、確認しますね」と言葉にするのも、安心材料になります。
よくある質問の代わりに使えるフレーズ集
- 「いつもの薬と比べて、飲み心地はどうですか?」
- 「薬を飲むときに困った場面はありますか?」
- 「ご家族はどんな反応でしたか?」
- 「薬以外で試していることはありますか?」
- 「次回来るときまでに、どんな変化があれば嬉しいですか?」
これらは開かれた質問で、生活背景や価値観がにじみます。ここで得た情報をもとに、閉じた質問で量や回数を確定すると、会話が立体的になります。
まとめ|質問のリズムを意識する
開かれた質問は心を開き、閉じた質問は情報を整えます。両方のバランスを取ることで、患者さんが自分ごととして治療に参加してくれるようになります。私自身、質問のリズムを意識するようになってから「話しやすかった」「次も相談したい」と言われる機会が増えました。
忙しい現場だからこそ、質問を意図的に選び、短時間でも安心感と必要情報を両立させましょう。今日のカウンターでも、ぜひ一つだけ開かれた質問を増やしてみてください。それだけで、患者さんの顔つきが変わる瞬間がきっとあります。

