毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。「そんな説明は聞いてない」と言われてドキッとした経験、薬局なら一度はありますよね。怒りの矛先になりがちな場面こそ、患者さんの「聞けなかった理由」を探るチャンスです。
なぜ「聞けなかった」のかを分解する
環境要因
待合の雑音、呼び出しのアナウンス、マスク越しの声のこもり。音が重なると、脳は大事な情報を拾いきれません。私もピークの夕方は、声量を上げても届かず、後日「聞いてない」と言われたことがあります。
心理要因
不安や怒りで頭がいっぱいだと、言葉が入る余地がなくなります。検査結果を心配しながら会計に並んでいる患者さんは、こちらの説明を「音」としてしか認識していないことも。
手続き要因
渡した資料が多すぎたり、専門用語を続けたりすると、理解が追いつかず「聞いてない」の印象だけが残ります。
先に“聞ける環境”を整える
視覚情報で入口を作る
- 見出しだけの短冊メモを渡し、説明の道しるべにする
- 服薬の優先順位を色で示したカードを見せる
- 「あと3点だけお伝えします」と指でカウントしながら進める
音声の通り道を確保する
- フェイスシールドやマスクを外せない時は、顔を斜めにして声の出口を確保
- うなずきのリズムを大きくすることで、相手の聴覚の注意をこちらに集める
- 雑音が多いときは「少し静かなところに移動しませんか」と短く提案
体験談:怒りがほどけた3分間
検査結果に不安を抱えた男性が「説明が足りない!」とカウンターで声を荒らげた日。私はいったん席を変え、メモ用紙に大きく「1.薬の目的 2.飲み方 3.副作用」と書いて見せました。「3つだけ話します、ここにメモします」と宣言し、話し終えたら紙をそのまま渡す。3分後には「これなら妻にも説明できる」と表情が緩み、「聞けなかった」が「聞けた」に変わりました。
「聞ける」を増やす4つの対話術
1. 先に要約を渡す
「今日は3つだけ確認します」と最初に骨組みを示すと、相手の脳内に受け皿ができます。話の途中で迷子になりにくくなります。
2. 重要語をゆっくり二重で言う
「朝・夕の食後、必ず」「この薬だけは今日から」。強調語は間を空けて繰り返し、聞き漏れを防ぎます。
3. 質問タイムを区切って宣言する
「この説明のあとに質問時間をとります」と先に言うと、途中で遮られず、お互いに集中しやすくなります。質問が出ない場合も「不安なことが浮かんだらあとから電話ください」と逃げ道を用意します。
4. 記録と共有をセットで渡す
「いまお伝えした内容をこの紙に書きました。家族と共有してください」と伝えるだけで、聞き逃しへの不安が和らぎます。スマホで写真を撮ってもらうのも有効です。
やってはいけないNG行動
- 「さっきも言いましたよね」と感情を返す
- 患者が話している途中に被せて説明を続ける
- 同じ資料をもう一度渡すだけで終わらせる
- 「忙しいので手短に」と前置きしてしまう
チームで共有したいチェックポイント
- 説明の入り口に「本日お伝えするのは3点です」を組み込んでいるか
- 見出しメモや色カードなど、視覚ツールがすぐ手に取れる場所にあるか
- 「電話でも聞けます」と案内するポスターが掲示されているか
- 静かな説明スペースを確保できる導線を作っているか
まとめ:「聞ける環境」をプレゼントする
「聞いてない」と言われると防衛反応が働きがちですが、実は聞ける条件が整っていないだけかもしれません。声の通り道、視覚の支え、質問の時間。この3つをセットで差し出せば、同じ内容でも届き方が劇的に変わります。次のカウンターで「今日は3点お伝えします」と紙を出すところから始めてみてください。聞けないが聞けるに変わる瞬間に立ち会えるはずです。

