確証バイアスで視野が狭まる訳

  • URLをコピーしました!

毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。
正直、自分の思い込みにハマって痛い目を見た経験は数えきれません。
今日は「確証バイアス」という心理を、薬局の現場でどう扱っているか語っていきます。

目次

確証バイアスとは何か

自分の都合が真実に見える心理

確証バイアスは、自分の考えや仮説を支持する情報ばかり集めてしまう傾向のこと。「あの患者さんはきっと説明を理解しているはず」と思い込むと、頷きだけ見て安心し、質問の少なさに不安を感じない。結果、飲み方を勘違いさせてしまう危険があります。

現場で起こる具体例

  • 常連さんだから説明は省いていいだろうと決めつける
  • クレームを言う患者さんはいつも同じ人だと考えてしまう
  • 「忙しいからミスが出る」と信じて、他の要因を探さない
    こうした思い込みが積み重なると、視野が狭くなり、リスクを見落とします。

思い込みが招いた失敗談

服薬ミスを見逃した出来事

数年前、僕は「この患者さんは几帳面だから飲み忘れはない」と決めつけていました。実際、薬カレンダーが色分けされていて完璧に見えたんです。しかし、ある日「薬が余る」と相談され、確認すると夜の服用をほとんど忘れていた。理由は「眠気が怖い」という不安。僕はそのサインを拾わなかった。患者さんの頷きだけを信じた確証バイアスの典型でした。

クレーム対応での早合点

ある日、電話で怒り気味の患者さんから「薬が足りない」と連絡が。僕は「また勘違いだろう」と思い込み、台帳だけ確認して「足りてます」と回答。しかし後で調べたら、実際に一包化の袋が抜け落ちていました。患者さんは僕の軽い対応にさらに怒り、謝罪に走る羽目に。自分の「相手は勘違いするものだ」という偏見が招いたミスでした。

なぜ確証バイアスが起きるのか

脳の省エネモード

忙しい現場では、脳が省エネしようとします。過去の経験から「たぶんこうだろう」と判断してしまう。情報を全部確認するのは時間もエネルギーもかかるので、無意識にショートカットを使ってしまうのです。

感情の影響

怒られたくない、認められたい、急ぎたい。感情が揺れている時ほど、自分を守る情報だけに目が行きます。僕も疲れている日ほど、「大丈夫、大丈夫」と根拠のない安心を探します。

チーム文化

「このやり方でいい」と暗黙のルールがあると、新しい視点が入りません。先輩が「いつもこれで回ってる」と言えば、後輩も疑わない。チーム全体で思い込みが強化されることもあります。

確証バイアスを見破るサイン

自分の内側のチェック

  • 「きっと」「絶対」「間違いない」と心の中でつぶやいている
  • 相手の違和感を感じながら無視している
  • 反対意見が出た瞬間にイラっとする
    これらは確証バイアスが作動している警告灯です。

チームで気づく視点

スタッフ同士の会話で「いつもそう」「前もこうだった」といったフレーズが頻発すると要注意です。僕らは朝礼で「その前提、本当?」と質問する時間を作っています。

バイアスをほぐす実践ステップ

ステップ1: 反証探しゲーム

自分の仮説に反する情報をあえて探します。「この患者さんは理解している」という仮説に対して、「じゃあ何が理解できていない可能性がある?」と問い直す。僕は問診票に「不安」「生活リズム」「飲み忘れ経験」の欄を追加し、反証を見つけやすくしました。

ステップ2: 事実と解釈を分ける

「患者さんが頷いた」という事実と、「理解したはず」という解釈を切り離す。僕はカルテに「表情」「返答」「質問の有無」など事実だけを書くようにし、解釈は後でチームと検討するようにしています。

ステップ3: セカンドオピニオンをもらう

同僚に「この判断どう思う?」と聞く習慣をつけています。別の視点からの質問をもらうと、自分の視界の狭さに気づけます。忙しい時ほど、声を掛ける勇気が大事です。

ステップ4: 意図的に時間を置く

即断しそうなときほど、30秒でも深呼吸してから判断。夜勤中に確認漏れしそうな時は、「一旦お水を飲んでから見直そう」と自分に声をかけます。

現場での工夫と仕組み

ダブルチェックシート

患者さん対応後に「説明した内容」「相手の反応」「追加で伝えたポイント」を書くシートを作りました。自分が見落としたサインに気づけるし、他のスタッフも参考にできます。

チーム内ミニ勉強会

月1回、事例を持ち寄って「この時の思い込みは何だった?」と振り返る会をしています。失敗談を笑い話にすることで、バイアスへの抵抗力がつきます。

バイアスアラートワード

「いつも」「だいたい」「間違いない」と言ったらベルを鳴らすルールを導入。冗談半分ですが、言葉の癖から思い込みに気づけます。

患者さんとの会話術

オープンクエスチョンを増やす

「大丈夫ですか?」ではなく、「飲むときに困っていることはありますか?」と聞く。イエス・ノーで終わらせない質問が、確証バイアスを崩します。

反復要約

患者さんの言葉をそのまま繰り返し、「つまりこういうことですね?」と確認する。相手の言葉で理解度を測れるので、自分の解釈に偏らずに済みます。

サマリーカード

説明した内容を簡単にメモして渡すと、「ここがわからない」と患者さんからフィードバックが来やすくなります。双方向になることで、思い込みが減ります。

他業種での応用

営業

「このお客様は価格しか見ていない」と決めつけると、価値提案の機会を逃します。僕が研修した営業チームでは、商談後に「他のニーズはなかったか?」を5分話し合う時間を作り、クロスセル率が上がりました。

カスタマーサポート

クレーム電話が来ると「どうせ怒鳴られる」と身構えますが、実際は相談がしたいだけのことも多い。通話の最初に「今日はどんな状況か教えてください」と丁寧に聞くと、思い込みが溶けて対応が柔らかくなります。

教育現場

「この子は計算が苦手」と決めつけず、どの場面でつまずくのか観察する。具体的な場面を見ていけば、実は「問題文の読み取りが苦手」など別の原因が見えてきます。

バイアスに飲まれないためのマインド

自分の不安を認める

思い込みの裏には不安が隠れています。「忙しくて確認できない」「怒られたくない」など、心の声を認めると冷静になれます。僕はノートに正直な気持ちを書き出してからカウンターに立つ日もあります。

失敗を共有する勇気

失敗を隠すと、同じバイアスがチームに広がります。僕はヒヤリハットを共有するとき、「ここで思い込みました」と正直に話します。すると他のスタッフも「私もこういう時やりがち」と話しやすくなります。

学び続ける姿勢

勉強会や外部セミナーに参加すると、新しい視点が手に入ります。最新の知識が増えるほど、古い思い込みに縛られにくくなります。

日常でできるトレーニング

バイアス日記

1日の終わりに「今日の思い込み」「気づけたきっかけ」「次に試したいこと」をメモ。少しずつ客観的な目を養えます。僕も寝る前にスマホで3行日記を書いています。

異業種との会話

全く違う現場の話を聞くと、自分の前提が揺さぶられます。薬局のやり方が当たり前と思っていたことが、実は改善できるヒントだらけだと気づきます。

逆の立場になるロールプレイ

患者さん役になってみると、こちらの説明がどれだけ一方通行だったか分かります。月に一度、スタッフ同士で役割を入れ替える研修をしています。

バイアスを見抜く質問リスト

自分へ

  1. この判断の根拠は具体的な事実か?
  2. 反対意見を聞いたか?
  3. ほかに説明できる理由はないか?

相手へ

  1. 「ほかに気になっていることはありますか?」
  2. 「違うパターンもありましたか?」
  3. 「誰かに相談しましたか?」
    質問を増やすことで、思い込みが自然とゆるみます。

データで裏付ける

指標の活用

ヒヤリハットの内訳を数字で追い、「思い込み」が原因だった件数を可視化。数字で突きつけられると、チームの危機感が高まります。

記録の振り返り

週に一度、カルテや問診記録を読み返して「事実と解釈の分離」ができているかチェック。赤ペンで「これは推測」と書き込み、気づきを共有します。

バイアスを味方にする方法

仮説思考に使う

思い込みを完全に消すのは難しい。だからこそ、仮説として扱い、検証をセットにする。「もしかしたら飲み忘れているかも」という仮説を立てたら、必ず質問で確かめる。仮説→検証→修正のループを意識します。

チームでの見張り役

シフトごとに「バイアス見張り番」を決め、会話の中で思い込みワードが出たら指摘してもらう。ゲーム感覚で取り組むと、空気が重くなりません。

よくある質問

Q1: 時間がない時はどうする?

チェックリストを活用し、最低限の質問を固定化します。例えば、「飲み忘れ」「副作用」「飲み合わせ」の3点だけでも確認する。時間がなくても、質問をゼロにしない工夫が大事です。

Q2: ベテランほどバイアスに気づきにくい?

経験が豊富だと「このパターンはこう」と決めつけがち。だからこそ、若手の意見を意識的に聞きます。「新人目線でどう見えた?」と尋ねると新鮮な発見があります。

Q3: 患者さんが「大丈夫」と言い張るときは?

「具体的にどんな時が大丈夫か教えてください」と掘り下げる。状況を細かく聞くと、実は困っている場面が見えてきます。

チェックリストでセルフ監査

週次レビュー

  • 先入観で判断した場面は?
  • 反証を集めたか?
  • チームに共有したか?
    この3つを振り返るだけで、確証バイアスの芽を早めに摘めます。

日次ルーティン

帰宅前に「今日の気づき」「次の改善アイデア」を一行メモ。翌日の朝礼で共有すると、チームの学びが循環します。

まとめと行動の提案

今日のポイント

  • 確証バイアスは省エネ思考から生まれる
  • 事実と解釈を分け、反証を探す癖をつける
  • チーム全員で思い込みにツッコミを入れる

明日のアクション

  1. 患者さんへの質問を一つ増やす
  2. 同僚に自分の判断をレビューしてもらう
  3. 日報に「思い込みチェック」欄を追加する
    確証バイアスは誰にでもある癖です。大事なのは、それに気づいて扱えるようになること。僕も明日、カウンターに立つ前に「今日はどんな思い込みが顔を出すかな?」と自分に問いかけてからスタートします。一緒に視野を広く保ちましょう。最後まで読んでくれてありがとうございます。

ケーススタディで学ぶ

ケース1: 花粉症シーズンの思い込み

春になると「鼻水=花粉症」と決めつけてしまいがち。ある患者さんに対し、僕は「例年通りですね」と鼻炎薬だけ準備しました。でも本当は副作用で鼻水が出ていた。ドクターに相談したら薬の組み合わせに原因があり、処方変更で改善。僕の早合点が長引く不調を招くところでした。症状の季節性だけで判断しないと肝に銘じています。

ケース2: 後輩への指導

新人Dさんがミスをしたとき、僕は「緊張しがちなタイプだから説明は苦手」と決めつけていました。しかし振り返りで話を聞いたら、単に情報量が多すぎたことが原因。サマリーカードを準備したら、落ち着いて対応できるようになった。相手をラベリングしない大切さを痛感しました。

ケース3: 家族からの相談

在宅患者さんのご家族から「父が薬を嫌がる」と相談されたとき、僕は「味が嫌なんだろう」と思い込んでいました。ところが本人に聞くと、「飲むとトイレが近くなって恥ずかしい」とのこと。生活環境を聞き出していれば、もっと早く気づけたはずでした。

ワークで鍛えるバイアス筋

逆説レビュー

あえて「自分の判断が間違っていたとしたら?」と仮定して、反証を探すワーク。チームで5分だけ実施しても、思い込みの揺れ方が体感できます。僕は週1回、閉店後にこのワークをしています。

事実カードゲーム

事実だけが書かれたカードと、解釈が混じったカードを混ぜて配り、どちらか当てるゲーム。遊び感覚で「事実と解釈の違い」を意識できます。

ブレインライティング

ホワイトボードに事例を書き、全員で「他の可能性」を付箋に書いて貼る。口下手な人でも意見を出しやすく、バイアスの幅が広がります。

参考になる問いかけ集

患者さんへ

  • 「この薬で困る場面はいつですか?」
  • 「飲み忘れた時、どう対処していますか?」
  • 「誰と一緒に薬を管理していますか?」

同僚へ

  • 「違う見方をするとどうなる?」
  • 「もし逆の結果だったら何が原因?」
  • 「他部署ではどうしている?」
    問いのストックが多いほど、視野が広がります。

確証バイアスとデジタルツール

チャット記録の活用

対応中に感じた違和感をチャットに残し、後から全員でレビュー。リアルタイムで共有すると、誰かが「それは思い込みかも」と指摘してくれます。

テンプレートの更新

問診票や説明マニュアルを定期的にアップデートすることで、古い前提に縛られないようにします。僕は四半期ごとにテンプレートの棚卸しをしています。

音声記録の振り返り

許可を得て会話を録音し、自分の質問の偏りをチェック。質問が誘導的になっていないか、相手の発言を遮っていないかが分かります。

バイアスと感情のセルフケア

睡眠と休息

睡眠不足のときほど、雑な判断をしがちです。夜遅くまで残業した翌朝は特に要注意。僕は睡眠ログアプリで6時間以下の日は「慎重モード」と手帳に書き、判断を一拍置くようにしています。

マインドフルネス

深呼吸や短い瞑想で心を落ち着かせると、感情に振り回されにくくなります。昼休みに3分だけ呼吸に集中すると、午後の判断がクリアになります。

感情の共有

「今ちょっと焦ってる」とチームに宣言するだけで、周りがフォローしやすくなり、思い込みを止めてくれます。弱みを見せる勇気が、バイアス対策になります。

フォローアップの仕組み

アフターコール

服薬開始後に電話でフォローすると、「実は飲みにくい」といった新情報が得られます。初回の判断が正しいか確認でき、確証バイアスを修正できます。

リマインダー設定

患者さんごとに「次回確認するポイント」をシステムに登録。忘れがちな質問を自動で思い出せるので、思い込みが減ります。

共有ノート

クラウドノートに気づきを書き込み、いつでも読み返せるようにしています。「○○さんはこう見えるけど、実は△△」といった注意点が蓄積され、チームの視野が広がります。

バイアスを減らす文化づくり

ありがとうフィードバック

指摘してくれた人に「ありがとう」を伝える仕組みを作りました。バイアスを指摘されると恥ずかしいですが、感謝で返すと雰囲気が柔らかくなります。

小さな失敗を歓迎

ミスを報告したらポイントが貯まる「学びガチャ」を導入。貯まったポイントでコーヒーを奢るなど、失敗を共有する文化を盛り上げています。

定期的な外部視点

外部の講師や異業種の友人に現場を見てもらい、気づきをもらいます。「受付の導線が迷いやすい」といった意見も、思い込みを壊すヒントです。

最後にもう一度

確証バイアスは、僕らの「楽をしたい」「安心したい」という優しい願いの裏返しです。だからこそ、責めずに扱うことが大切。気づいたら深呼吸、質問を一つ増やす、仲間に声をかける。小さな積み重ねが、安心安全なコミュニケーションを作ります。明日の現場で、あなたの問いかけが誰かの視野を広げますように。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

現役薬剤師として、人と向き合う仕事を続けてきました。
患者さんとの何気ない会話の中に、信頼や安心が生まれる瞬間がある――そんな「伝え方」の力に魅せられて、このブログをはじめました。

いまは医療の現場を離れ、**「伝える力」「聴く力」**をテーマに、日常や職場、家族の中で使えるコミュニケーションのヒントを発信しています。

心理学や会話術、言葉選びの工夫など、明日から使える内容を中心に。
読んだ人の人間関係が少しでもやわらかくなるような記事を目指しています。

目次