ドア・イン・ザ・フェイスの活用術

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毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです
正直、患者さんやお客様にお願いごとを通すのってめちゃくちゃ骨が折れます。
でも「一度断られてから本命を出す」ドア・イン・ザ・フェイスをうまく使うと、するっと通る瞬間があるんです。

目次

ドア・イン・ザ・フェイスはなぜ効くのか

ドア・イン・ザ・フェイス(以下DIF)は、最初にあえて無理めの要求を出して断ってもらい、その後で本命の要求を提示すると受け入れてもらいやすくなるテクニックです。
営業の世界では定番ですが、医療現場でも意外と活躍します。
特に「患者さんに生活習慣を変えてもらいたい」「家族に負担の大きいケアをお願いしたい」なんて時、心理的な揺れを起こせるのが魅力です。

心理的な背景

断られた側は「申し訳ないな」という心理が働きます。
また、二つ目の要求が相対的に小さく見えるので、「これくらいなら協力してもいいか」と判断してくれる。
これが社会的交換理論とか対比効果とか、専門書では難しい言葉で説明されていますが、現場ではシンプルに「申し訳なさ+ハードルが下がって見える」の二本柱で理解しておくと使いやすいです。

調剤室で体験した生の瞬間

花粉症の患者さんに「毎日こまめに部屋を掃除してください」と言ったら、案の定「それは無理」と苦笑いされました。
そこで間髪入れず「じゃあ、寝具だけでも週一で洗い替えしてみませんか?」と切り替えたら、「それくらいなら頑張ります」と返ってきたんです。
これがまさにDIFの瞬間でした。
最初のお願いが断られた時、内心では「よし、予定通り」とガッツポーズです。

ありがちな失敗とリスク管理

「とりあえず無理難題をふっかければいい」と勘違いすると、信頼貯金が一気に溶けます。
ここは薬局で痛い目を見たので、反面教師として共有させてください。

ハードルの設定を間違える

一度、糖尿病の患者さんに「毎日食べたものをすべて記録してください」と伝えたところ、顔が引きつりそのまま帰ってしまったことがあります。
その後来局してくれた時に聞いたら、「プレッシャーが強すぎて薬局に行きづらくなった」と言われました。
これでは本末転倒ですよね。
だからこそ、最初の要求は「断れるけど、話が途切れないライン」を狙うのが鉄則です。

間を空けずに提示する

最初に断られた後、間が開きすぎると「無理なことを言われた」という嫌な感情だけが残り、DIFが効かなくなります。
私は必ず、断られた瞬間に笑顔でフォローラインを放つようにしています。
「わかります、私も全部は難しいです。じゃあ○○だけ試しませんか?」という感じです。

関係性が浅い相手には控えめに

初対面の患者さんや、まだこちらへの信頼が薄いお客様には、DIFの振れ幅を小さくします。
無茶な要求をぶつけると「この人は自分のことしか考えていない」と評価されてしまうからです。
私は初回は「断られても笑って済ませられる要求」だけにしています。

段階を設計する5ステップ

DIFを成功させるには、準備が大事です。
やみくもに使うと相手の不信感を招くので、以下のステップで設計しましょう。

ステップ1: 相手の優先順位を把握する

患者さんの生活リズム、仕事の忙しさ、家族の支援状況など、優先順位を事前にヒアリングします。
薬の待ち時間で雑談するだけでも十分情報は集まります。
「最近、夜の休憩は取れていますか?」みたいな質問が役立ちます。

ステップ2: 本命の要求を明確にする

DIFのゴールは二つ目の要求が通ることです。
本命の要求が曖昧だと、最初の要求も組み立てられません。
私はいつも「本命メモ」という小さな付箋に、最終的にお願いしたい内容を書いておきます。

ステップ3: 断られやすく、でも誠実な要求を考える

無茶な要求でも、誠実さが伝わる内容であることが重要です。
例えば「毎日ウォーキング1時間」と伝えるより、「朝晩30分ずつ歩くのはどうでしょう」と言った方が現実味がありますし、断られても「一応こちらを思って言ってくれたんだな」と思ってもらえます。

ステップ4: 断られた直後の言葉を用意する

断り文句はほぼ決まりパターンです。
「忙しい」「体力がない」「忘れる」など、よくある理由を想定して、それぞれに対するフォローラインを用意しておきます。
私はカウンターの裏側に、小さなカンペを貼っています。

ステップ5: 受け入れられた後のフォローを必ず行う

本命が通ったらそこで終了ではありません。
「やってみてどうでしたか?」と次回の来局時に必ず声をかけます。
このフォローがあるかどうかで、相手のやる気は継続します。

現場で使えるフレーズ集

DIFを使う時のセリフは、ある程度テンプレ化しておくと楽です。
以下は実際に私がよく使う言い回しです。

断られやすい要求の投げ方

  • 「一番効果的なのは○○を毎日続けることなんです」
  • 「理想を言うと、○○も併せて取り組んでいただきたいんです」
  • 「難しいのは承知なんですが、○○の習慣もつけてほしいと思っています」

本命の要求に切り替える一言

  • 「ですよね、そこまではハードル高いですよね。ではまず○○から始めませんか?」
  • 「では、最初の1週間だけ○○を試すのはどうでしょう?」
  • 「じゃあ、○○は次の課題にして、今は○○だけ意識してみましょう」

受け入れてくれた後のフォロー

  • 「無理のないペースでOKです。次回の時に感想を教えてくださいね」
  • 「困ったらいつでも相談してください。一緒に調整しましょう」
  • 「その一歩だけでも体は楽になりますから、まずは気楽に続けてみてください」

ケーススタディ3選

具体的なケースを紹介します。

ケース1: 生活習慣の改善

高血圧の患者さんに「減塩メニューを毎食手作りしてください」とお願いしたら、「仕事が忙しいから無理」と即答されました。
そこで「では、週に2回だけ自炊する日に減塩メニューを意識してみませんか?」と切り替えたところ、「それなら家族と相談してみます」と前向きな反応が。
次の来局では「2回どころか3回できました」と笑顔で報告をいただきました。

ケース2: 在宅介護の家族

在宅療養されているお母さまを支える娘さんに、「夜間も定期的に体位を変えてあげてください」と伝えた時、顔色が曇りました。
「夜はさすがに寝たい」と言われたので、「では夜中は一度だけ起きて、寝る前に姿勢を調整するのはどうでしょう」と提案。
結果、「一度なら頑張れそう」と受け入れてくれ、褥瘡のリスクを抑えることができました。

ケース3: 服薬遵守

若い患者さんに「薬を飲んだら毎回記録アプリに入力しましょう」とお願いしたところ、「そういうの続かないんですよ」と断られました。
そこで「じゃあ、寝る前の歯磨きのタイミングだけ薬のシートを確認するルールにしませんか?」と提案。
歯磨きは毎日しているので、その流れなら取り入れやすかったようです。

DIFを使う際の注意点

便利なテクニックですが、乱発すると信頼を失います。

相手の尊厳を守る

断られることを前提にしていると、つい「断ってもらうための要求」を軽いノリで言ってしまいがちです。
でも相手は真剣に受け取ります。
私は必ず「実現できたら理想的なんです」と丁寧に伝え、こちらの誠実さが伝わるように意識しています。

過去の約束との整合性

以前にお願いしたことと矛盾する要求を出すと、「前と言ってることが違う」と混乱されます。
カルテや接客ノートで過去の会話を振り返り、整合性の取れたお願いを組み立ててください。

感謝のフィードバック

本命の要求を受け入れてもらった時は、必ず感謝を伝えましょう。
「助かります」「一緒に改善できるのが心強いです」と言うだけで、相手のモチベーションが段違いに上がります。

応用シーンとアレンジ

患者さん以外にも、取引先や社内メンバーなど人が変わればアプローチも少し変化させます。
ここでは現場で試して効果のあった応用例を紹介します。

取引先との価格交渉

医薬品卸との交渉で「来月から仕入れ値を5%下げてください」と切り出したら、「それは厳しい」と返ってきました。
そこで「では、納期を短縮してもらえるだけでも助かります」とお願いしたところ、受け入れてもらえました。
こうしたビジネス交渉では、最初の要求は数字で示し、二つ目は業務の手間を減らす方向で提示すると通りやすいです。

チームメンバーへの依頼

忙しい同僚に「週3回患者さん向けの情報ポップを更新して」と頼んだら、「今の人員ではきつい」と言われました。
そこで「じゃあ、週1回だけ私と一緒に10分の打ち合わせをしませんか?そこからアイデアを拾って私が記事化します」と切り替えると快諾。
社内で使う時は、相手の時間を奪うのではなく「一緒にやる」選択肢を用意すると角が立ちません。

オンラインでの活用

LINEで患者さんにセルフケアをお願いする時もDIFは有効です。
最初に「今日から食事を写真付きで送ってください」と伝え、断られたら「では気になる時だけ一言メモを送ってください」と提案。
実際にメモを送ってもらえるようになると、そこから会話が続き、必要なフォローを行いやすくなります。

実践を支えるチェックリスト

行き当たりばったりだと効果が安定しません。
私はシフトの合間に下記のチェックリストを確認し、準備不足がないか洗い出しています。

アフターアクションの振り返り

  • 最初の要求は相手の事情に合わせていたか
  • 断られた際の表情や声のトーンを記録したか
  • 二つ目の要求を受け入れてもらった後のフォローを済ませたか

次のチャレンジに向けた仕込み

  • 相手が次に乗り越えられそうなステップは何か
  • チームメンバーと共有すべき学びは何か
  • 定量化できる指標(行動回数や体調の変化)は確保できたか

この振り返りを週に一度行うだけでも、DIFの精度がぐっと高まります。

DIFをチームで共有する

個人技にしないことが、薬局全体の接客クオリティを押し上げます。
私は週1回の朝礼で、成功例と失敗例を共有しています。
新人スタッフには「最初の要求と本命のギャップはこのくらいが安全」とガイドラインを渡し、練習のロールプレイも実施。

ロールプレイの進め方

  1. 先輩役が無理めな要求を投げる
  2. 新人役が断る
  3. 先輩役が本命へ切り替える
  4. 受け入れた後のフォローまで通しで練習

これを繰り返すと、新人も「断られても怖くない」と自然に言えるようになります。

成果の見える化

DIFを使った結果、どれだけ患者さんの行動が変わったかを数値化するとチームの士気も上がります。
私は「本命要求が実行された回数」をエクセルでざっくり管理しています。
数字が伸びると、みんなで小さくガッツポーズです。

よくある質問と私の回答

患者さんやスタッフからよく寄せられる疑問に、私なりの回答をまとめました。
疑問を先回りしておくと、説明の手間が減り信頼も高まります。

Q1. 嘘の要求を最初に出してもいい?

絶対にダメです。
実現する気のない要求を投げると、後から本命が通ったとしても、どこかで「この人は信用できない」と感じられてしまいます。
私が最初に提示するのは「理想だけど、相手が頑張ればギリ達成できそう」なラインです。
正直に「難しいのはわかっています」と添えるだけで、相手の警戒心は和らぎます。

Q2. 二つ目の要求も断られたら?

その場は引き下がり、後日改めて再提案します。
私はカルテメモに「次回はハードルをさらに下げる」「情報提供を増やす」と書き込み、別の角度からアプローチします。
例えば、運動を断られ続けた患者さんには、翌週に血圧のグラフを見せながら「歩数が少ない日ほど血圧が高い傾向があるみたいです」とデータで提示したら納得してもらえました。

Q3. 本命が通った後のご褒美は必要?

言葉のご褒美は必須です。
私は「助かります」「一緒に乗り越えましょう」と毎回伝えます。
物理的なご褒美は不要ですが、成果を一緒に喜ぶ演出は効果的です。
たとえば、歩数が増えた患者さんには歩数グラフにシールを貼って渡し、「ここ伸びてますね!」とハイタッチすることもあります。

まとめ

DIFは「断らせてから本命を通す」というシンプルな心理テクニックですが、相手の尊重と準備が欠かせません。
現場では、最初の要求を断られても焦らず、本命に滑らかに切り替え、最後は感謝で締める――この流れを身体に染み込ませることが大切です。
面倒くさがりの私でも、この型を作ってからは交渉のストレスがかなり減りました。
ぜひ皆さんも、自分なりのDIFルーティンを整えて、患者さんやお客様との関係をもっと強固にしてみてください。

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この記事を書いた人

現役薬剤師として、人と向き合う仕事を続けてきました。
患者さんとの何気ない会話の中に、信頼や安心が生まれる瞬間がある――そんな「伝え方」の力に魅せられて、このブログをはじめました。

いまは医療の現場を離れ、**「伝える力」「聴く力」**をテーマに、日常や職場、家族の中で使えるコミュニケーションのヒントを発信しています。

心理学や会話術、言葉選びの工夫など、明日から使える内容を中心に。
読んだ人の人間関係が少しでもやわらかくなるような記事を目指しています。

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