専門用語をわかりやすく言い換える翻訳術

  • URLをコピーしました!

毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。薬の説明をしてて、専門用語を使うと患者さんがポカンとした表情になること、ありませんか?

「副作用」「併用禁忌」「半減期」…薬剤師には当たり前の言葉でも、患者さんには暗号みたいなものです。でも専門用語を全く使わないのも、正確性に欠けちゃう。

今日は年間1万人への説明で磨いた、専門用語をわかりやすく「翻訳」するテクニックをお話しします。

目次

なぜ専門用語の翻訳が必要なのか?

薬剤師と患者さんの間には、知識の大きな差があります。

私たちが当たり前に使ってる言葉が、患者さんには理解できない。でも理解できないまま薬を飲んでもらうのは、安全性の面でもリスクがあります。

私も新人の頃は、「この薬はCYP3A4で代謝されるので…」とか専門用語をそのまま使ってました。患者さんの困惑した表情を見て、「もっとわかりやすく伝えないと」って気づいたんです。

でも単純に「簡単な言葉に変える」だけじゃダメ。正確性を保ちながら、相手のレベルに合わせて「翻訳」することが大切です。

基本的な翻訳パターン

1. 具体例で説明するパターン

専門用語: 副作用
翻訳: 「お薬を飲むことで起こる可能性がある、体の変化のことです。例えば、眠くなったり、お腹が痛くなったりすることがあります」

専門用語: 相互作用
翻訳: 「お薬同士がお互いに影響し合うことです。例えば、Aのお薬がBのお薬の効き方を強くしたり、弱くしたりすることがあります」

2. 身近なものに例えるパターン

専門用語: 半減期
翻訳: 「お薬の量が体の中で半分になるまでの時間です。お風呂のお湯が冷めていくように、お薬も時間とともに体から減っていきます」

専門用語: 血中濃度
翻訳: 「血液の中にお薬がどのくらい含まれているかということです。コーヒーの濃さのように、お薬にも濃さがあります」

3. 機能を説明するパターン

専門用語: ACE阻害薬
翻訳: 「血管を広げて血圧を下げるお薬です」

専門用語: プロトンポンプ阻害薬
翻訳: 「胃酸の出る量を減らすお薬です」

年代別翻訳テクニック

高齢者向け(70代以上)

特徴:

  • ゆっくりとした説明を好む
  • 身近な例えが効果的
  • 繰り返し説明が必要

翻訳例:
専門用語: 降圧薬
高齢者向け翻訳: 「血圧を下げるお薬です。血管の中を流れる血の勢いを、穏やかにしてくれます」

働き世代向け(30-60代)

特徴:

  • 効率的な説明を求める
  • 日常生活への影響を重視
  • ある程度の医学知識がある

翻訳例:
専門用語: 徐放錠
働き世代向け翻訳: 「ゆっくりと溶けて、長時間効果が続くお薬です。1日1回で24時間効いてくれるので、飲み忘れが少なくなります」

子育て世代向け

特徴:

  • 家族への影響を心配
  • 安全性を重視
  • 具体的な注意点を求める

翻訳例:
専門用語: 催眠薬
子育て世代向け翻訳: 「眠りを助けるお薬です。お子さんの世話に影響が出ないよう、飲むタイミングを一緒に相談しましょう」

シチュエーション別翻訳術

初回処方時

初めての薬について説明する時は、特に丁寧な翻訳が必要です。

例:糖尿病薬の説明
専門用語版: 「DPP-4阻害薬でインクレチンの分解を阻害し、グルコース依存的にインスリン分泌を促進します」

翻訳版: 「血糖値を下げるお薬です。食事をした時だけ働いて、血糖値が上がりすぎないようにコントロールしてくれます。お腹が空いている時は働かないので、低血糖になりにくいのが特徴です」

薬が変更になった時

変更理由を含めて説明するため、比較しながら翻訳します。

例:血圧薬の変更
専門用語版: 「ACE阻害薬からARBに変更になります」

翻訳版: 「血圧を下げるお薬の種類を変更します。どちらも血管を広げて血圧を下げる働きは同じですが、新しいお薬の方が空咳という副作用が起こりにくいです」

副作用の説明時

不安を与えすぎないよう、でも正確に伝える翻訳が重要です。

例:抗ヒスタミン薬
専門用語版: 「H1受容体拮抗薬による中枢神経抑制作用」

翻訳版: 「眠気が出る可能性があります。アレルギーを抑える成分が、脳の覚醒を維持する部分にも少し影響するためです。個人差がありますが、特に飲み始めの数日間は注意してください」

効果的な翻訳のコツ

1. 段階的説明法

複雑な概念は、段階を分けて説明します。

例:薬物動態

  1. 「お薬を飲むと、まず胃や腸で溶けます」
  2. 「溶けたお薬は血液に入ります」
  3. 「血液に乗って、必要な場所に運ばれます」
  4. 「役目を終えたお薬は、肝臓で処理されて体の外に出ます」

2. 数値の可視化

抽象的な数値を具体的にイメージできるようにします。

例:副作用の発現率
専門用語: 「副作用発現率5%」
翻訳: 「100人の方が飲んだとすると、5人の方に何らかの副作用が現れる可能性があります」

3. ポジティブ変換

ネガティブな印象を与えがちな専門用語を、前向きに翻訳します。

専門用語: 薬物依存
翻訳: 「お薬に体が慣れてしまうことがあります。そのため、止める時は医師と相談しながら、少しずつ減らしていきます」

翻訳時の注意点

1. 正確性を失わない

わかりやすくしようとして、医学的に不正確になってはいけません。

NG例:
血圧薬を「血液をサラサラにする薬」と説明
→ 抗凝固薬と混同される可能性

OK例:
「血管を広げて、血液の流れを良くする薬」

2. 不安を煽らない

副作用の説明などで、必要以上に不安を与えないよう注意。

NG例:
「危険な副作用が起こる可能性があります」

OK例:
「注意していただきたい症状があります。でも早めに気づけば対処できますので、一緒に気をつけていきましょう」

3. 個人差を考慮

同じ翻訳が全ての患者さんに適用できるわけではありません。

相手の反応を見ながら、説明のレベルを調整することが大切です。

実際の翻訳事例集

よく使う専門用語の翻訳リスト

薬効関連:

  • 抗炎症作用 → 炎症(腫れや痛み)を抑える働き
  • 鎮痛作用 → 痛みを和らげる働き
  • 抗菌作用 → 細菌をやっつける働き
  • 解熱作用 → 熱を下げる働き

服用方法関連:

  • 頓服 → 症状が出た時に飲むお薬
  • 定時服用 → 毎日決まった時間に飲むお薬
  • 空腹時服用 → 食事の前に飲むお薬
  • 食間服用 → 食事と食事の間に飲むお薬

副作用関連:

  • 消化器症状 → 胃腸の調子が悪くなること
  • 皮膚症状 → 肌に現れる変化(発疹、かゆみなど)
  • 中枢神経症状 → 眠気やめまいなどの症状

まとめ:患者さん目線の翻訳を心がけて

専門用語の翻訳は、患者さんとの架け橋になる重要なスキルです。

ポイントまとめ:

  1. 具体例や身近な例で説明
  2. 年代や状況に合わせて調整
  3. 段階的に理解を深める
  4. 正確性を保ちながらわかりやすく
  5. 不安を煽らない表現を選ぶ

完璧な翻訳ができなくても大丈夫。大切なのは「患者さんにとってわかりやすく伝えたい」という気持ちです。

私も毎日の接客で、より良い翻訳方法を模索してます。患者さんから「よくわかりました」って言ってもらえた時の嬉しさは格別です。

明日からの薬の説明で、ぜひ「翻訳」を意識してみてください。患者さんの理解度と満足度が、きっと変わりますよ!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

調剤薬局で働く現役薬剤師です。
医療現場の非効率さに疑問を持ち、独学でプログラミングを習得しました。
今では、ReactやPythonを使って現場の業務を効率化するツールを自作しています。
このブログでは、医療や薬局業務に役立つIT活用術や、プログラミング初心者の方に向けた実践的な学習ノウハウを発信しています。

目次