毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。薬局の現場って、意外と説得の場面が多いんですよね。「薬、ちゃんと飲んでくださいね」と伝えても、「あとで飲みます」と言いつつ忘れる患者さんは山ほどいる。そんなとき、ミルトンモデルの柔らかい言い回しが役に立ちます。怪しげな催眠術じゃなく、相手をリラックスさせて自然と行動に導く言葉の型です。
こんな悩みありませんか
- ストレートに伝えると相手が構えてしまう
- 気持ちは伝わっているのに行動につながらない
- 指示やお願いをやんわり伝えたいけど、言葉が見つからない
私も昔は「飲まなきゃダメですよ」と強めに言ってしまい、かえって反発されたことが何度もあります。ミルトンモデルを知ってからは、言い回しを変えるだけで相手の受け取り方が柔らかくなるのを実感しました。
ミルトンモデルの基本
ミルトン・エリクソンって誰?
ミルトンモデルは、アメリカの精神科医ミルトン・エリクソンの言葉のパターンを整理したものです。彼は催眠療法の第一人者で、患者に直接命令するのではなく、曖昧な言葉や比喩を使って無意識に働きかけました。NLPではその手法をコミュニケーションに応用し、相手の抵抗を減らしながら望ましい方向に導く技法として体系化しています。
代表的なパターン
- 曖昧な表現: 「もしかしたら、今より楽になるかもしれません」
- ダブルバインド: 「今飲むか、夕食後にするか、どちらがいいですか?」
- ペーシング&リーディング: 「仕事でお疲れですよね。だからこそ、この薬で体調を整えておきましょう」
これらのパターンは、相手の無意識に働きかけつつ、選択肢を与えて行動を促すのが特徴です。
ミルトンモデルの使い方
基本の流れ
- 相手の状態を観察し、ペーシング(合わせる)
- 曖昧な表現や比喩で安心感を作る
- さりげなくリーディング(導く)で行動を促す
例えば、「最近忙しいですよね。きっと体も頑張ってるはずです。だからこそ、この薬がサポートになってくれますよ」といった流れです。直接「飲め」とは言ってないのに、なんとなく飲んだほうが良さそうな気がしてくる。不思議ですが、効果は抜群です。
実際の会話例
患者さんが「薬を飲むと眠くなるから嫌だな」と言ったとします。そこで「眠くなるのは体が回復しようとしてるサインかもしれませんね。仕事に支障が出ると困りますから、飲むタイミングを一緒に調整してみましょうか」と返す。否定せず受け入れつつ、自然な流れで行動提案につなげています。
現場での実践例と注意点
調剤カウンターでの体験
ある日、飲み忘れ常習の患者さんに「今日はちゃんと飲んでくださいね」と言ったら、苦笑いされて終わりました。そこで別の日、ミルトンモデルを意識して「一日の終わりにこの薬を飲むと、明日の朝がだいぶ楽になりますよ」と伝えたところ、「じゃあ今日は忘れないようにします」と前向きな反応が返ってきました。言葉の力、侮れません。
やりすぎ注意
ミルトンモデルはあくまで相手のために使うもの。相手を意図的に操ろうとすると、言葉の裏にある意図が透けて見えて信頼を失います。また、曖昧な表現ばかりだと要点が伝わらず、逆に不信感を招くことも。バランスが大事です。
ミルトンモデルを身につけるための練習
日常会話でテスト
家族や友人との会話で、意識して曖昧な表現を使ってみましょう。「このコーヒー、飲むとちょっと落ち着くかもよ」といった何気ない一言でも練習になります。相手の反応を観察し、どの表現が自然に受け入れられるかを試行錯誤するのがコツです。
ロールプレイ
職場の同僚とロールプレイをすると、実践感覚が身につきます。私は新人研修で、「ストレートに言うパターン」と「ミルトンモデルで言うパターン」を交互に試してもらい、反応の違いを体感してもらっています。皆、後者のほうが受け入れやすいと口を揃えます。
ミルトンモデルと他のスキルの組み合わせ
メタモデルとの使い分け
ミルトンモデルは曖昧さを活かすのに対し、メタモデルは曖昧さを潰して具体化します。私は、相手が緊張しているときはミルトンモデルでリラックスさせ、慣れてきたらメタモデルで詳細を引き出す、という流れをよく使います。両方のスキルが揃うと、会話の幅がグッと広がります。
傾聴との相乗効果
曖昧な表現を使う前に、まずは相手の話をしっかり聞くことが大切。傾聴で安心感を与えた上でミルトンモデルを使うと、説得感が自然と高まります。相手がうなずいたり、目線を合わせてくれたら成功のサインです。
実践で気づいたこと
ミルトンモデルを使っていると、自分の言葉遣いが柔らかくなり、無駄な対立が減ってきます。「飲んでください」ではなく「飲んでおくと楽ですよ」と言い換えるだけで、相手の表情が変わる。これって、日常生活でも同じなんですよね。家族との会話でも、指示口調を減らして提案型にするだけで雰囲気が良くなります。
よくある失敗と対処法
- 曖昧にしすぎて伝わらない: 大事なポイントは最後にハッキリ伝えましょう。
- 押しつけに聞こえる: 相手の状況を肯定してから提案するのがコツ。
- 自分の感情が入ってしまう: 感情的になると曖昧な表現が不自然になるので、一度深呼吸して落ち着いてから話すこと。
練習の継続方法
- 音読してリズムを身体に覚えさせる
- 職場のミーティングで一言添えてみる
- 自分の会話を録音して振り返る
さらに学ぶためのリソース
ミルトンモデルを深く学ぶには、NLPの専門書やワークショップが役立ちます。私は海外の講義動画や、エリクソンの症例集を読んで理解を深めました。学ぶほどに、言葉の力って奥深いなと感じます。
まとめ
ミルトンモデルは、相手を操る魔法ではなく、相手の心に寄り添いながら行動を促す言葉の型です。忙しい現場でも、ちょっとした言い回しを工夫するだけで関係性が変わります。面倒くさいなと思うときもありますが、効果を実感するとやめられなくなる。ぜひ明日からの会話で、一つでもいいのでミルトンモデルのフレーズを取り入れてみてください。きっと、空気が柔らかくなりますよ。
練習日記
ミルトンモデルを身につけるために、私は毎晩その日の会話を振り返って「どのフレーズが響いたか」「どこで反発が出たか」をメモしています。面倒ですが、これを続けると自分の言い回しの癖がよく見えるようになるんです。例えば、曖昧な表現を使うときに声が小さくなる癖があったので、意識的に堂々としたトーンで話すようにしたら、説得力がぐんと上がりました。
ビジネスでの応用
ミルトンモデルは医療現場だけでなく、営業やプレゼンでも効果を発揮します。商品の説明で「この機能はお客さまの仕事を楽にしてくれるかもしれません」と曖昧に言うことで、相手の想像力を刺激できます。実際、私の知り合いの営業マンはこの手法を使って契約率を上げたそうです。具体的な数値を出す前に、まずふんわりした未来のイメージを描いてもらう。この順番がミソです。
よくある質問
Q1: ミルトンモデルって結局、相手を操るテクニックじゃないの?
A1: そう見えるかもしれませんが、目的は相手の無意識に働きかけて選択肢を広げること。強制ではありません。
Q2: どんな場面でも使える?
A2: 使えるけど、相手が論理的に説明を求めている場面では逆効果になることも。TPOをわきまえるのが大事です。
Q3: うまく言い回しが出てこないときは?
A3: 事前にフレーズ集を作っておくと便利です。私はスマホのメモにお気に入りの表現を貯めています。
ケーススタディ
家庭での実践
子どもに宿題をさせたいとき、「今やりなさい」ではなく「宿題を終えるとゲームがもっと楽しくなるかもよ」と伝える。これだけで反応が違います。ミルトンモデルは家庭の平和にも役立つんですよね。
医師への提案
医師とのやり取りでも、ミルトンモデルを意識すると議論がスムーズです。「この治療法を使うと患者さんの負担が少し減るかもしれません」と伝えると、相手も柔らかく検討してくれます。はっきり断定するより、選択肢を示すほうが相手の思考が動きます。
継続のコツ
ミルトンモデルは一度覚えたら終わりではなく、継続的に磨く必要があります。私は週に一度、自分の会話を録音して聞き直しています。最初は恥ずかしいですが、客観的に聞くことで改善点が見つかる。スポーツのフォームチェックと同じです。
最後のまとめ
ミルトンモデルは、ふわっとした表現で相手の心をほぐし、自然な形で行動につなげるコミュニケーションの型です。使いすぎると怪しく見えるのでほどほどに、でも要所で取り入れると会話が驚くほどスムーズになります。今日の会話で一度だけでも試してみて、相手の反応を観察してみてください。きっと新しい発見があります。
実践テンプレート
- ペーシング: 「今日は暑かったですね」
- 曖昧な提案: 「水分を取ると、体がちょっと楽になるかもしれません」
- リーディング: 「この薬を一緒に飲んでおくと、明日がさらに過ごしやすくなると思います」
この三段構えを意識すると、自然な流れで説得ができます。テンプレート通りに話す必要はありませんが、頭に入れておくと咄嗟の場面で役立ちます。
練習で得た気づき
ミルトンモデルを使っていると、相手の反応が以前より繊細に見えるようになりました。微妙な表情の変化や息遣いを感じ取ることで、「今の言葉は響いたな」「ちょっと警戒してるな」と判断できる。これまで気づかなかったサインに気づけるのが一番の収穫かもしれません。
よくある誤解
ミルトンモデルは優しい言葉ばかり使うイメージがありますが、実は相手の価値観に合わせて言い回しを変えることが重要です。スポーツ好きな人にはスポーツの比喩を、料理好きな人には調理の比喩を使う。相手の世界観に寄り添うことで、言葉の浸透力が何倍にもなります。
学習リソース
- 『エリクソン催眠の技法』: ミルトンモデルの元祖を知るには必読
- NLPトレーニング動画: YouTubeで検索すると無料で学べるコンテンツが山ほどあります
- 社内勉強会: 同僚と実践を共有すると学びが深まる
おわりに
ここまで読んでくださってありがとうございます。ミルトンモデルは一見ふわっとしたテクニックですが、現場で使うと確かな効果を感じられます。言葉で人を動かすというと大げさですが、相手の心にそっと触れて背中を押すイメージ。明日の会話で、一言だけでも柔らかい提案を添えてみてください。あなたの言葉が、誰かの行動を変えるかもしれません。

