認知フレームで世界の捉え方を整える

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毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。正直、同じ説明でも相手の受け取り方が全然違うたびに「人の頭の中ってどうなってるんだろ」と思いながらカウンターに立っています。今日はそのモヤモヤの正体、認知フレームについて、薬局でのリアルなエピソードを交えてガッツリ掘ります。

目次

認知フレームが気になる理由

伝わったと思ったのに噛み合わないあの瞬間

薬の副作用の説明をしていても、ある人は「怖い」と感じ、別の人は「安心した」と笑う。こちらの言葉は同じなのに、相手の受け取り方が真逆。これって、相手の頭の中にある「認知フレーム」が違うからなんです。認知フレームとは、物事をどう切り取って理解するかの枠組み。過去の経験・価値観・文化によって形が決まります。

新人の頃、私は認知フレームを意識せずに「皆同じように説明すればOK」と思っていました。ところが、抗がん剤の副作用を控えめに伝えたら「そんなに軽い話なの?」と逆に不信感を招いてしまった。患者さんは「抗がん剤=強烈な副作用が出る」というフレームを持っていたので、私の説明がズレたんです。そこから認知フレームを意識するようになり、会話の質が一気に変わりました。

認知フレームを理解すると信頼が積み上がる

相手の認知フレームに合わせて話すと、「自分のことをわかってくれている」と感じてもらえます。例えば「薬は怖いもの」というフレームを持つ患者さんには、安心材料を先に提示しながら説明する。一方で「薬は頼れる味方」というフレームの方には、効果の裏付けを丁寧に伝える。認知フレームを想像するだけで、相手との距離はぐっと縮まります。

認知フレームが形成される背景

過去の成功体験・失敗体験

人は経験を通して「こうすればうまくいく」「これは危険だ」という認知フレームを作ります。例えば、過去に薬でひどい副作用が出た人は「薬=怖い」というフレームを持ちやすい。逆に薬で大きく改善した人は「薬=頼もしい味方」というフレームになります。だから、最初のヒアリングで過去の体験を丁寧に聞くことが重要なんです。

周囲の情報・メディア

SNSやテレビの情報もフレームを作ります。「〇〇薬が危険」というニュースを見た直後の患者さんは、警戒モードが強まっています。私もニュース後には「本当にこの薬で大丈夫?」と質問攻めに遭うことが多い。そのとき「今日はどんな情報をご覧になりましたか?」とフレームの出所を聞き、正確なデータと照らし合わせて説明します。

文化・価値観

世代や職業によってもフレームは変わります。年配の方は「医師の言うことは絶対」というフレームを持つことが多く、こちらが補足すると「先生の言うことと違うんだけど」と不安に。若い世代は「自分で調べて納得したい」というフレームが強く、情報源の明示を求めます。同じ説明をしても刺さり方が全然違うので、背景を見極めながら話す必要があります。

認知フレームを読み解く手順

ステップ1: 相手の言葉選びを観察する

「怖い」「面倒」「助かった」など相手がよく使う言葉は、そのままフレームを映します。私は問診中にキーワードをメモし、後から会話に活かします。例えば「忙しい」が連発されたら、「時間を取られるのは嫌だ」というフレームがあると推測。説明も短時間で済むよう工夫します。

ステップ2: エピソードを引き出す

「以前はどうされていましたか?」「過去に似た経験はありますか?」と聞くことで、フレームの根拠が見えてきます。副作用に敏感な患者さんに「以前、副作用で困ったことがありましたか?」と尋ねたら、「母が薬で倒れた」と話してくれたことがあります。その瞬間、相手の警戒心の背景がクリアになり、会話の方向性が定まりました。

ステップ3: フレームに合わせて情報を再構築

相手がどんな枠組みで世界を見ているかが分かったら、こちらの説明もその枠に合わせて組み替えます。「忙しい」を連発する人には、1分でできる服薬管理術を紹介。「副作用が怖い」人には、発生確率と対処法を先に伝える。フレームに沿って情報を並べ替えるだけで、同じ内容でも納得度が上がります。

認知フレームを活用した具体例

ケース1: 仕事最優先のビジネスパーソン

「昼休みも会議があるから、薬局に長居できない」という人には、「まず全体の流れを1分でまとめますね」と伝え、ポイントだけをサクッと説明。さらに「差し支えなければ、次回はアプリで事前問診を送っていただけると待ち時間が減らせます」と提案すると、相手のフレームと噛み合いました。

ケース2: 家族の健康を守りたい主婦

このタイプは「家族第一」のフレームを持っていることが多い。「お子さんの体調はいかがですか?」と最初に問い、家族の背景を聞き出したうえで説明します。「ご家族にも共有できるよう、今日のポイントを書面にしてお渡ししますね」と伝えると、安心した表情になります。

ケース3: 医療情報マニアな患者さん

「PubMedで論文を読んできました」と言うような方もいます。この場合は「今日の薬剤については○○大学の研究でも効果が確認されています」といった具体的なエビデンスを提示。フレームが「科学的根拠最優先」なので、データで会話することが信頼構築につながります。

認知フレームを調整するための言葉

承認のクッション

「そのお気持ちはもっともです」「そう感じられるのは自然なことです」と相手のフレームを否定せずに認める。これがないと、防衛反応が高まり、こちらの話が入っていきません。私はよく「過去に辛い経験をされたんですね」と一言添えてから本題に入ります。

共同探索の誘い

「一緒に整理してみませんか?」「他に気になる点があれば教えてください」と、相手と並走する姿勢を示します。フレームを押し付けるのではなく、共に新しい枠を作るイメージです。クレーム対応でも「原因を一緒に探ってもよろしいでしょうか」と言うと、対立が和らぎます。

未来志向の言葉

認知フレームは過去の経験から作られるので、未来の成功イメージを描いてもらうと変化が起きやすい。「次の通院までにできそうなことを一つ決めてみましょうか」と問いかけると、相手の視点が前向きに広がります。

認知フレームを整えるセルフワーク

自分の口癖を記録する

人に寄り添うためには、自分自身のフレームも知っておく必要があります。私は閉店後に「今日何回『忙しい』と言ったか」など口癖をメモ。自分のフレームが「時間がない」に偏っていると気づき、余裕を持った対応を意識できるようになりました。

未知の世界に触れる

同じ環境にいるとフレームが固定化されます。私は意識的に他業種の勉強会に参加したり、異文化の映画を観たりして、感覚の幅を広げています。多様な価値観を体験すると、相手のフレームを想像しやすくなります。

反対意見を聞く練習

自分と違う意見を否定せず、まずは「どうしてそう思うのか」を尋ねる。これを繰り返すことで、フレームの違いを楽しめるようになります。私は同僚と敢えて立場を入れ替えるロールプレイをし、「薬はなるべく飲みたくない患者役」を体験しました。すると、患者さん側のフレームが身体で理解できるようになりました。

現場で役立つ認知フレーム診断リスト

  1. 最近強く印象に残った出来事は?
  2. その出来事をどう評価している?(嬉しい/怖い/面倒など)
  3. その評価の根拠になった過去の経験は?
  4. 今、一番大切にしているものは?(家族/仕事/健康など)
  5. 今回の説明で一番気になる点は?

この5つを会話の中でさりげなく聞き出すと、相手のフレームがかなり明確になります。私はカルテに「家族第一」「仕事優先」などのメモを残し、次回の会話で活かしています。

認知フレームを動かした成功事例

副作用が怖いと話していた患者さん

最初は新しい薬を拒否していた方に、過去の経験を丁寧に聞きました。「以前、別の薬で入院した」とのこと。そこで「当時と今回の薬は作用が全く違う」「副作用が出てもすぐ対応できる体制がある」と説明し、さらに「何かあれば24時間連絡してください」と行動プランを提示。数週間後、「安心して飲めています」と報告をもらいました。相手のフレームに合わせて情報を再構築した結果です。

忙しさを理由に服薬をサボっていた方

「仕事が忙しくて」と言い続ける患者さんには、「忙しい時でもできる30秒セルフチェック」を提案。さらに「移動中にアラームを鳴らす」など、フレームに沿った工夫を共有しました。すると「これなら続けられそう」と前向きに。認知フレームが整うと行動も変わると実感した瞬間です。

家族に心配をかけたくない患者さん

「家族に迷惑をかけたくない」というフレームを持つ方には、「ご家族と共有できる簡単なチェックシートを一緒に作りませんか?」と提案。家族と協力する未来を描けたことで、通院への意欲が高まりました。

認知フレームに振り回されないための注意点

決めつけない

相手の言葉が少ないうちから「この人はこうだ」と決めつけると、誤ったフレームで話を進めてしまいます。あくまで仮説として捉え、会話を重ねながら修正する柔軟さが大切です。

自分のフレームを押し付けない

「こうすべき」という価値観をぶつけても、相手は動きません。私は「私の感覚ではこうですが、○○さんはどう感じますか?」とクッションを入れ、選択肢を提示するようにしています。

情報量を調整する

フレームによっては、情報を詰め込みすぎると混乱します。「全部説明しなきゃ」と焦るのではなく、相手が受け取れる量を意識して区切りながら伝えるのがポイントです。

認知フレームを広げる会話テンプレート

  1. 状況確認: 「今日はどんなことが気になっていますか?」
  2. 感情の言語化: 「そのとき、どんなお気持ちでしたか?」
  3. 過去の振り返り: 「以前にも似た経験はありましたか?」
  4. 未来の希望: 「今後どうなったら嬉しいですか?」
  5. 共同行動の提案: 「そのために今日からできることを一緒に考えてもよろしいでしょうか?」

この流れで会話を組み立てると、相手のフレームが自然と浮かび上がり、共有できる目標が見えてきます。

認知フレームを鍛える日々のルーティン

朝のニュースクリッピング

毎朝、医療・ビジネス・地域情報をざっとチェックし、患者さんが触れそうな話題を把握します。これだけで「今日はこのニュースで不安になっているかも」と予測でき、先回りした説明が可能になります。

中締めメモ

午前・午後の終わりに「印象に残ったフレーム」を短く記録。「家族を心配させたくない」「副作用が怖い」などのメモが蓄積すると、地域全体の傾向も見えてきます。薬局スタッフで共有すると、チーム全体の対応力が上がります。

週1回のリフレクションタイム

週末に30分時間を取り、「今週はどんなフレームに出会ったか」「自分の対応はどうだったか」を振り返ります。改善点を書き出し、翌週の行動に落とし込む。この地道な作業が、信頼される会話の土台になります。

まとめ

認知フレームを意識すると、相手の世界の見え方が理解でき、会話が驚くほどスムーズになります。大切なのは、相手の言葉や表情からヒントを拾い、仮説を立て、会話を通じて確かめ続けること。薬局でもビジネスでも家庭でも、フレームを意識したコミュニケーションは信頼を育てる最強の武器になります。明日から「この人はどんなフレームで世界を見ているのかな?」と問いを持ち、対話を楽しんでいきましょう。

認知フレームを活かすクロージング例文集

不安が強い相手への締め

「今日伺ったお話から、○○さんが副作用をとても心配されていることが伝わってきました。そのお気持ちを踏まえて、万が一のときの対処方法をメモにしましたので、まずはこれを参考に一緒に様子を見ていきましょう。」

自立心が強い相手への締め

「情報を自分で調べたいというお気持ち、すごく大切ですよね。今日共有した資料の出典をまとめたリストをお渡ししますので、まずは気になるところからチェックしてみてください。次回来局時に感想を聞かせてもらえると嬉しいです。」

家族思いの相手への締め

「ご家族のことを一番に考えていらっしゃるのが本当によく伝わりました。まずは今日のポイントを家族と共有できるよう、簡単な説明シートを一緒に作成しました。よろしければ今晩、ご家族と確認してみてください。」

チームで認知フレームを共有する仕組みづくり

カルテタグの導入

患者さんのカルテに「安心優先」「時間短縮希望」「家族共有重視」といったタグを付けると、スタッフ全員が認知フレームを意識した対応ができます。私は色つきの付箋を使い、パッと見でわかるようにしています。

朝礼でのフレーム共有

毎朝のミーティングで「昨日の印象的なフレーム」を一人1つ発表。新人もベテランも気づきを共有することで、「このケースならこう話そう」という引き出しが増えます。

振り返り会での成功シェア

月1回の振り返り会で、認知フレームを意識して成功した事例を持ち寄ります。「忙しいフレームの患者さんに3分で伝える方法がうまくいった」など具体的なストーリーを共有すると、現場全体の再現性が高まります。

認知フレームを壊さずに更新する言葉遣い

「書き換える」のではなく「上書きする」

「その考えは間違っています」と否定するのではなく、「これまでの経験からそう感じるのは自然です。ただ、今回に限ってはこんな新しい情報もあります」と上書き提案をする。相手の過去を尊重しながら新しい視点を届けられます。

選択肢を並べて主体性を守る

「AとBの方法がありますが、○○さんの生活リズムだとどちらが良さそうでしょうか?」と質問することで、相手のフレーム内に新しい選択肢を置くことができます。主体性を尊重すると、フレームの変化が自然に起きます。

小さな成功を積み上げる

一気にフレームを変えようとせず、「まずは1週間試してみましょう」「次回までに1つだけ記録を付けてみませんか?」と小さな成功体験を提案。成功体験が新しいフレームを育てます。

認知フレームを学ぶおすすめのインプット

  • 現場の声を記録したポッドキャスト: 医療や接客のリアルな会話から、様々なフレームが浮かび上がります。
  • 異文化コミュニケーションの本: 文化による認知の違いが詳しく紹介されており、異なるフレームを想像するトレーニングになります。
  • 心理学の基礎書籍: 認知バイアスやスキーマなど、フレーム形成の仕組みを体系的に理解できます。

最後にもう一歩踏み込むなら

認知フレームは目に見えないからこそ、丁寧な観察と対話が欠かせません。私は毎日の会話を通して「この人は何を大事にしているのか?」を探り、相手が安心できる枠組みを一緒に作ることを意識しています。あなたも明日の会議や接客で、まず相手のフレームを想像し、言葉を選ぶところから始めてみてください。会話の温度が一段と上がるはずです。

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この記事を書いた人

現役薬剤師として、人と向き合う仕事を続けてきました。
患者さんとの何気ない会話の中に、信頼や安心が生まれる瞬間がある――そんな「伝え方」の力に魅せられて、このブログをはじめました。

いまは医療の現場を離れ、**「伝える力」「聴く力」**をテーマに、日常や職場、家族の中で使えるコミュニケーションのヒントを発信しています。

心理学や会話術、言葉選びの工夫など、明日から使える内容を中心に。
読んだ人の人間関係が少しでもやわらかくなるような記事を目指しています。

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