毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。薬局のカウンター越しで「この薬は苦くないですよね?」と患者さんに聞かれたとき、思わず「大丈夫ですよ」と答えそうになった自分にハッとしました。私には平気な味でも、相手にとっては地獄かもしれない。これが投影バイアスの怖さです。
投影バイアスとは?
投影バイアスとは、自分の感情や価値観を相手も共有していると無意識に思い込んでしまう心理の癖です。たとえば私は漢方薬の独特な香りが好きなので、「患者さんもきっと落ち着くだろう」と決めつけてしまいがち。しかし現実には、香りを嗅いだ瞬間に顔をしかめて拒否する人もいる。自分の感覚をそのまま相手に投影することで、ニーズを見誤ってしまいます。
バイアスが生まれる背景
人間の脳は「自分」を基準に世界を理解します。忙しい現場ほど時間が足りず、相手の情報を集めるよりも、過去の経験からさっと判断してしまう。薬局でも、前の患者さんが喜んだ説明を次の人にも流用するクセがつきます。便利ですが、相手の状況が違えばバイアスになるんです。
日常に潜む投影バイアス
- 「私はこのサプリで元気になったから、あなたも効くはず」と自信満々で勧めてしまう。
- 「忙しいときは早く終わらせたいでしょ?」と、相手が質問したいサインを見落とす。
- 「このくらいの副作用は平気ですよ」と励ましたつもりが、相手には不安を軽視されたと感じさせてしまう。
読者の悩み:なぜ伝わらないのか
「しっかり説明したのに不満そうな顔をされた」「善意で提案したのに断られた」「想定外の質問が飛んできて戸惑う」。接客や医療の現場でよく聞く悩みです。自分の価値観を基準に話してしまうと、相手の本音が見えなくなる。投影バイアスが原因かもしれません。
共感が空回りする瞬間
私は以前、抗生剤の服用を嫌がる小学生に対して「すぐ治るからがんばろう」と励ましました。ところが、彼にとって一番の不安は「学校で薬を飲むと友達にからかわれること」だった。私の励ましはズレていて、かえって沈黙を生んでしまった。相手の感情を勝手に決めつけると、共感したつもりでも空振りになるんです。
原因:質問不足と想像力の偏り
投影バイアスを起こす最大の原因は、相手への質問が足りないこと。忙しい時間帯は特に、「いつもの説明」で済ませたくなる。しかし相手の生活スタイルや価値観を聞き出さないままでは、結局自分のものさしで判断してしまいます。
情報収集の省略
私は午後のピークタイムに、糖尿病薬の飲み方を5分で説明しようとして失敗しました。「皆さん朝食後に飲んでますよ」と言ったら、「私は朝食を抜く日が多い」と返され、焦って説明をやり直すハメに。ヒアリングを省くと、投影バイアスが一気に顔を出します。
経験値の過信
経験が増えるほど「このケースは前と同じ」と感じてしまう。たしかに経験知は大切ですが、相手の背景が違えば話は別。私は過去の成功体験をストックしておく一方で、「今回は何が違う?」と自分に問いかける習慣を作りました。
解決手順:投影バイアスを外す6ステップ
1. 自分の前提を自覚する
相手に会う前に、「私はこの薬を飲みやすいと感じている」「私は短時間で説明を終えたい」と心の中で言語化します。前提を明文化すると、会話中に「今、自分の価値観を押し付けていないか?」とチェックしやすくなります。
2. 相手の現状を具体的に尋ねる
「普段、どんなタイミングで薬を飲んでいますか?」「味に関して不安はありますか?」など、生活に踏み込んだ質問を最初に置きます。私はヒアリング用のメモ欄を作り、必ず3つ以上の質問を投げるルールにしています。
3. 感情と言葉をセットで確認する
相手が「大丈夫です」と言っても表情が固いなら、大丈夫ではありません。「表情が少し心配そうに見えますが、他に気になることはありますか?」と声をかける。これで本当の不安が出てくることが多いです。
4. 選択肢を複数提示する
自分のおすすめを一つに絞らず、「A案だと味がマイルドで、B案は即効性が高いです。どちらが良さそうですか?」と選択肢を並べる。相手が自分の価値観で選べるようにすることで、投影バイアスを減らせます。
5. 反応をメモして学ぶ
会話後に相手の反応を記録し、「どんな価値観の人だったか」「自分の予想と何が違ったか」を振り返る。私は患者さんのメモに「甘味が苦手」「昼食が不規則」などを残し、次回の対応に活かしています。
6. 振り返りの時間を確保する
1日の終わりに「今日はどんな投影バイアスが出た?」と自問する。私は閉店後の10分を振り返りタイムに充て、明日試す質問を3つメモします。これを続けると、自然と相手軸で考えられるようになります。
実践エピソード
ケース1:味に敏感な患者さん
ある女性は漢方薬の匂いが苦手で、飲むのをためらっていました。私は「温かいお湯で溶かすと香りが和らぎます」と提案したところ、「私は冷たい水で一気に飲みたい」と返ってきた。そこで冷水で飲む方法を調べて共有すると、彼女の顔がぱっと明るくなった。自分の好みを押し付けず、選択肢を提示した結果です。
ケース2:夜勤明けの看護師
夜勤明けでふらふらの看護師が薬を受け取りに来たとき、私は「帰ったらすぐ飲んで寝てください」と言いかけました。が、彼女は「この後に子どもを迎えに行かなきゃ」と話してくれた。そこで「車の運転前は眠気が出ないか確認しましょう」とアドバイスを変更。投影バイアスを抑えてヒアリングしたことで事故を防げたケースです。
ケース3:価値観の違う家族
糖尿病を抱える父親と付き添いの娘さん。娘さんは「カロリー制限が大事」と強調し、父親は「食事制限はもう嫌だ」と反発。私は二人に別々の質問を投げ、「父さんは何を優先したいですか?」「娘さんはどんなサポートなら続けられそうですか?」と聞きました。すると娘さんは「運動を一緒にしよう」と提案し、父親も「散歩ならできる」と笑顔に。互いの価値観を引き出すことで、投影バイアスのぶつかり合いが解けた瞬間でした。
注意点と落とし穴
質問攻めにならない
ヒアリングを意識しすぎると、尋問のように矢継ぎ早に質問してしまう。私は「質問→相手の答えを要約→共感→次の質問」というリズムを守っています。これで相手も心地よく話せます。
データだけで判断しない
血液検査の数値や売上データは大切ですが、それだけで相手の価値観は見えません。数値を見て安心した気持ちが、投影バイアスを助長することも。私は数値を示すとき、「この数値についてどう感じますか?」と感情の確認をセットにしています。
自己否定に陥らない
投影バイアスに気づくと、「私はなんて自分勝手なんだ」と落ち込む人もいます。でも、これは誰にでもある心理。大事なのは、気づいたら調整する柔軟性です。私も日々失敗しながら、少しずつ修正しています。
まとめ:相手の世界に足を踏み入れる
投影バイアスは、自分の世界に相手を引きずり込んでしまう癖です。これを外すには、質問と観察で相手の価値観を探り、選択肢を提示し、反応を記録して学ぶこと。薬局で何千人もの患者さんと話して感じるのは、「正しい答え」は相手の中にあるということ。私たちにできるのは、その答えを引き出すための舞台を整えることだけです。今日の会話から、「私はそう思うけど、あなたはどう?」と一言添えてみてください。マジで、それだけで投影バイアスは静かにほどけていきます。

