毎日40人・年間1万人以上と会話しているRyoです。薬局で患者さんやスタッフと向き合っていると、「自分ならできる」と信じられるかどうかが行動の質を大きく左右するのを痛感します。今日は、その感覚――自己効力感についてガッツリ掘り下げます。
自己効力感は心理学者バンデューラが提唱した概念で、「自分はこの状況をうまく扱える」と信じる感覚のこと。これがあるかないかで、挑戦への一歩が軽くも重くもなる。患者さんに服薬指導を受け入れてもらえるか、スタッフが新しい接客フレーズを試せるか。すべては自己効力感の有無にかかってきます。
自己効力感が低い人が抱える悩み
行動の一歩目がとにかく重い
薬局の新人スタッフからよく聞くのが、「失敗したらどうしよう」という不安です。注意点を伝えるべきと分かっていても、患者さんを不快にさせないかと足がすくむ。営業の世界でも同じでしょう。新しい提案を持ちかけたいのに、断られる未来がちらついて踏み出せない。自己効力感が低いと、頭では必要と分かっていても行動が止まります。
外部評価に振り回される
自己効力感が低いと、他人の言葉ひとつで心が大きく揺れます。患者さんから「前の薬剤師さんのほうが丁寧だった」と言われただけで、業務全体に自信を失ってしまう。上司の指摘が「自分はダメだ」という烙印に変換され、どんどん視野が狭くなる。これでは、学びのチャンスも活かせません。
自己効力感が行動を左右する仕組み
期待と結果のループ
自己効力感は期待を形作ります。「うまくできる」という期待があると、挑戦の一歩が軽くなり、その結果成功体験を得やすくなる。すると「やっぱりできた」と感じ、さらに高い期待へ。逆に「無理かもしれない」と思うと準備を怠り、本当に失敗する。このループが日々のパフォーマンスを左右します。
感情と集中力に影響を与える
自己効力感が高い人は、ストレスがかかったときでも「どうにかなる」と考え、感情の揺れが小さい。集中力を切らさず、目の前の課題に向き合えます。私自身、クレーム対応の場面で「ここを乗り切れば必ず信頼は取り戻せる」と言い聞かせることで、声のトーンや表情を安定させてきました。これが自己効力感の力です。
自己効力感を構成する4つの要素
1. 達成経験
最も強力なのが実際の成功体験。小さな成功でも積み上げると、「自分ならできる」の根拠になります。新人スタッフには、最初から難しい患者対応を任せず、成功しやすい場面を意図的に作るようにしています。
2. 代理経験
他人の成功を見ることで「自分にもできそうだ」と感じる。私は、ベテランがどう声をかけているかを録音し、新人に共有します。「同じ薬を扱っている自分でもできるかも」と感じてもらうのが狙いです。
3. 言語的説得
「あなたならできる」と伝えること。ただし根拠のない励ましは逆効果なので、具体的な強みとセットで伝えます。「昨日の副作用説明、とても分かりやすかったから今日も任せたい」など、事実ベースの言葉が重要です。
4. 生理的・情動的状態
緊張で手汗が止まらないときは、自己効力感も一気に下がります。私は、重要な説明の前に深呼吸とストレッチを行い、身体的な落ち着きを作るようにしています。
現場で自己効力感を高めるステップ
ステップ1:成功体験をミニゴールに分解
「今日1日で患者さんの質問に3回自分から答える」など、達成しやすい目標を設定します。達成できたらすぐに自分を褒める。私はスタッフとの面談で「どんな小さな成功がありましたか?」と必ず聞き、記録しています。
ステップ2:ロールモデルを観察する
頼れる先輩の会話をメモしたり、動画で残したり。観察するときは「どんな言葉を選んでいるか」「表情や姿勢はどうか」まで細かくチェックします。観察の後、自分でも同じフレーズを声に出して練習すると定着が早いです。
ステップ3:言葉の栄養補給を習慣化
上司や仲間からのフィードバックを自分でストックするノートを作りましょう。私は「ほめ言葉メモ」を作り、落ち込んだときに読み返して自己効力感を補給しています。患者さんからの「説明がわかりやすかった」という一言も即メモします。
自己効力感を下げないためのセルフケア
睡眠・食事を最優先する
自己効力感は心だけの問題ではなく、体調が直結します。睡眠不足だと判断力が鈍り、「今日はうまくいかないかも」と感じやすい。私は夜勤明けの日は重要な説明を他のスタッフに任せ、しっかり休むようにしています。無理に頑張るより、体を整えたほうが自己効力感は保てます。
感情を書き出して客観視する
クレーム対応で心が折れそうになったら、感情を紙に書き出します。「怖かった」「悔しい」と素直に書く。すると、「でもこうすれば次はうまくいく」と前向きな言葉が自然と出てきます。感情の棚卸しは自己効力感の回復に欠かせません。
チームで自己効力感を育てる仕組み
朝の共有タイムで成功体験を回す
朝礼で「昨日の小さな成功」を1人ずつ共有します。「患者さんが自分から質問してくれた」「クレームになりそうな場面で落ち着いて対応できた」など。成功のシャワーを浴びると、チーム全体の自己効力感が上がります。
フィードバックを即時に伝える
良かった点は24時間以内に伝えるのが鉄則です。私は患者さんから感謝を受けたら、すぐにスタッフに伝える。「さっきの説明が丁寧で安心できたそうだよ」とフィードバックすると、表情が一気に明るくなります。
自己効力感を測定・記録する方法
自己評価シートを活用
1週間ごとに「挑戦したか」「失敗を振り返れたか」を5段階で自己評価するシートをつけています。数字で残すと、波が見えてくる。落ちたタイミングを振り返ると、たいてい睡眠不足やコミュニケーション不足が原因だと分かります。
目標と結果をセットで書く
「患者さんに薬の飲み合わせを説明する」→「自信度3、結果は成功」など、目標と結果をペアで記録。成功したら理由を、失敗したら次の改善策を添える。このログがたまると、自己効力感の辞書ができあがります。
自己効力感が高まった現場の変化
症例共有会での発言が増えた
自己効力感を意識的に高めてから、スタッフが症例共有会で積極的に発言するようになりました。以前は沈黙だった時間が、今では質問とアイデアで埋まります。患者さんの課題をチームで解決するスピードが上がりました。
患者さんの再来局が増えた
「あなたに相談したい」と戻ってきてくれる患者さんが増えました。こちらが自信を持って提案できると、相手にも安心感が伝わる。自己効力感が高まると、自然と表情と声のトーンが安定し、信頼を呼び込むのです。
自己効力感を妨げる思考のクセと対処法
完璧主義
「100点でないと意味がない」と考えると、挑戦前から心が折れます。私は「今日は80点でOK」と自分に言い聞かせ、完璧にできなかったポイントは学びと捉えるようにしています。
比較癖
他人と比べて落ち込むと、自己効力感が一瞬でしぼみます。比較しそうになったら、「過去の自分」とだけ勝負する。昨日の自分より1ミリ成長したら勝ち。そう言い聞かせます。
ケーススタディ:自己効力感が高まった瞬間
事例1:在宅訪問での薬剤管理
在宅訪問が苦手だったスタッフAさん。最初は訪問前夜に眠れなくなるほど緊張していました。そこで、同行訪問で成功しやすい場面をつくり、訪問後すぐに「患者さんが安心していた理由は何だと思う?」と振り返りを実施。本人が「自分の声が落ち着いていたから」と気づいた瞬間、表情が一気に柔らかくなりました。次の訪問では自ら提案を持ち込み、患者さんから「また来てほしい」と言われるまでに成長。自己効力感が引き出した変化です。
事例2:カウンターでの苦手な説明
糖尿病治療薬の説明が苦手だったBさんは、専門用語の多さに圧倒されていました。私は説明を3つのステップに分けたテンプレートを作成し、ロールプレイで繰り返し練習。成功した瞬間にその場で拍手し、感想を言い合いました。小さな成功を刻んだことで、本人も「自分にもできる」と確信し、今では新人に教える立場です。
事例3:クレーム対応後の立て直し
クレームを受けて落ち込んでいたCさんには、感情の棚卸しと再挑戦のシナリオづくりを一緒に行いました。「次に同じ状況になったら何て言う?」と対話し、実際に声に出してもらう。次のクレーム予兆では落ち着いて対応し、患者さんから逆に感謝をもらう結果に。失敗体験を学びに変えることで、自己効力感は回復します。
実践トレーニング:自己効力感を鍛える1週間プラン
Day1:成功体験リストを作る
過去1年で頑張ったことを10個書き出します。仕事だけでなく、プライベートもOK。「朝の挨拶を続けた」「家族に感謝を伝えた」など小さなことでも構いません。
Day2:ロールモデル観察
尊敬する同僚の接客を観察し、使っている言葉や間の取り方をメモ。観察後はすぐに自分の言葉で再現練習をします。
Day3:呼吸と姿勢のリセット
深呼吸10回と姿勢チェックを行い、身体的な落ち着きを作ります。緊張しているときほど姿勢が前のめりになるので、肩を開いて胸を張る。
Day4:言語的説得を受け取る
信頼できる同僚に「自分の強みを3つ教えてください」とお願いし、メモします。もらった言葉はスマホの待ち受けにして毎日眺めます。
Day5:挑戦を宣言
朝礼で「今日は〇〇に挑戦します」と宣言。周りが見てくれていると思うと、行動の背中を押されます。
Day6:感情の棚卸し
その日起こった嬉しかったこと・悔しかったことをノートに書き、次へのアクションを決めます。
Day7:振り返りと次週の目標設定
1週間を振り返り、「どの行動が自己効力感を高めたか」「来週は何を試したいか」をまとめます。私はこの作業を日曜の夜にやることで、月曜の朝を軽やかに迎えられます。
自己効力感を高める言葉のストック
患者さんへの声かけフレーズ
- 「〇〇さんは毎回きちんと服薬状況を教えてくださるので、とても助かっています。」
- 「この説明を理解した上で質問してくださるのは、準備が整っている証拠ですね。」
こうした具体的な称賛は、相手の自己効力感を高めるだけでなく、自分自身も「支えられている」と感じられるため、自分の自己効力感も上がります。
スタッフに伝えるフィードバック例
- 「さっきの患者さんへの声のトーン、とても落ち着いていて安心感がありました。」
- 「質問を受けたときに一拍置いて考えていたのが丁寧でよかったです。」
フィードバックは具体的な行動とセットで伝えると効果的です。曖昧なほめ言葉より、「何が良かったか」を伝えることで、相手も自分の強みを自覚でき、自己効力感が育ちます。
デジタルツールで自己効力感を支援する
音声記録アプリの活用
ボイスメモやTeamsの音声メモ機能を使い、1日の振り返りを音声で残します。文字にする時間がないときでも、声に出すだけで自己効力感を補充できる。翌朝聞き返すと、昨日の自分が今日の自分を励ましてくれます。
チャットでの称賛チャンネル
私の職場では、Slackに「Good Job チャンネル」を作り、良かった行動を即座に共有するようにしています。「〇〇さんが患者さんの不安をうまく受け止めていた」など具体的なメッセージが流れると、みんなの自己効力感が底上げされます。リモートワークが増えた営業チームでも、この方法は応用できます。
よくある質問Q&A
Q1. 自己効力感と自己肯定感の違いは?
自己肯定感は存在そのものへの肯定で、自己効力感は「具体的な行動をやり遂げられるかどうか」の信念です。どちらも大切ですが、行動を変えるのは自己効力感。だから現場ではまずこちらを育てましょう。
Q2. 失敗が続くときはどう立て直す?
失敗の規模を小分けにして考えます。「全然ダメだ」ではなく、「今日の説明で時間配分を間違えた」など、改善可能な単位に分解。次に「次はこう試す」と具体的な行動を一つだけ決めます。
Q3. チーム全員の自己効力感を底上げするコツは?
共通の成功体験を作ること。例えば「お薬手帳の確認率100%チャレンジ」を1週間行い、達成したらチームでお祝いする。成功を共有する場が、集団の自己効力感を押し上げます。
まとめ:自己効力感は日々の言葉と行動で育つ
自己効力感は、一夜で爆上がりする魔法ではありません。小さな成功を拾い、仲間と喜び合い、体調を整える――この積み重ねこそが「自分ならできる」という感覚を太くする道です。私も明日、患者さんに「この薬ならきっと良くなります」と伝えるために、自分の自己効力感を磨き続けます。あなたも一緒に、行動を変える力を育てていきましょう。

